2025年6月24日
平和・民主・革新の日本をめざす全国の会 代表世話人会
アメリカ政府は6月21日、イスラエルが13日に開始したイランの核施設などへの攻撃に加担し、3カ所の核施設に空爆を行った。イスラエルは、イランの核兵器保有が間近だと一方的に断じ、自衛権を主張して先制攻撃を行い、アメリカは22日に開かれた国連安全保障理事会で「国連憲章にのっとった集団的自衛権の行使」だと主張した。
しかし、イランでの核査察を行っている国際原子力機関(IAEA)は「核兵器開発に向けた証拠はない」と述べ、アメリカ国内でも今年3月に米国家情報長官が上院の公聴会で「イランは核兵器を製造していない」と証言していた。そのことからすれば、「差し迫った脅威」の根拠はなく、イスラエルの先制攻撃もアメリカの参戦も国連憲章に違反している。
核施設への攻撃は、ジュネーブ条約をはじめとする国際法に違反し、周辺住民や国境を越えた地域への人道的被害も強く懸念されるものであり、この点でも今回の攻撃は容認できない。
イランの核兵器保有は、国際的な安全保障の上からも阻止すべき課題だ。しかし忘れてならないのは、イランの核開発を制限することを目的に合意された米英中ロなど6カ国との「イラン核合意」(2015年)から2018年に一方的に脱退したのは第1次トランプ政権時のアメリカ政府だという点である。イランの核開発を加速させた責任を棚上げにして、「脅威」をことさらに強調する身勝手さも指弾されなければならない。
今回のアメリカの攻撃で、核軍縮で一定の役割を果たしてきた核不拡散条約(NPT)が毀損されたことも見過ごせない。
NPTに加盟しているイランはIAEAの査察を受け入れてきたが、攻撃したイスラエルはNPTには参加せず、IAEAの査察要求にも応じずに核兵器を保有している。国際的なルールに従った国がルールを無視した国に攻撃され、そこに核大国のアメリカが加勢したことで条約の不平等性がより鮮明になった。そのことから、自国の安全保障の必要を主張してNPTを脱退し、核兵器を保有する方が得との風潮が広がることさえ懸念される。
NPT体制の維持、強化が核軍縮・不拡散体制の礎石と位置付ける日本政府にも、深刻な問題が突きつけられたことを強く指摘したい。
ウクライナへの戦争を続けるロシアや、ガザでの人道攻撃に加えてイランへの先制攻撃を行ったイスラエルと歩調を合わせ、アメリカが「法の支配」を踏みにじったことの国際社会への影響ははかり知れない。大きな影響力を持つ大国が、「武力による現状変更」を容認することでは世界の混迷は深まるばかりである。
6月24日、イランとイスラエルの停戦合意が突然発表され、当面、紛争の拡大は回避された。しかし、それですべての問題が解決した訳ではない。とりわけ巨大な軍事力を背景に暴走するアメリカへの国際的な対処が求められている。日本政府は、日本国憲法の平和主義もよりどころに、核兵器禁止条約に参加して批准促進などの多国間協調を積極的に働きかけ、外交的手段による新たな平和の枠組みづくりの先頭に立つよう強く求める。