2024年11月30日
全国革新懇代表世話人会
はじめに(交流会で深めあいたいこと)
10月27日投開票で行われた第50回総選挙の結果、政治状況は大きく変化しました。自民党は改選前議席から56議席減の191議席と過半数を割り、8議席減った連立相手の公明党と合わせても215議席と過半数を下回りました。政権与党が常任委員会の委員長を独占できる「絶対安定多数」を背景に、まともな論議も経ずに悪法を次々に成立させ、憲法蹂躙の閣議決定を繰り返した「自民党一強」状態は大きく変化しました。
「さよなら自民党政治」の大運動などに取り組んだ全国の奮闘の成果です。
また、日本維新の会や国民民主党なども合わせた改憲勢力も3分の2議席を確保できず、「憲法改正が『冬の時代』」(産経新聞・10月28日)へと局面が変わりました。
総選挙後の特別国会で行われた首班指名選挙は30年ぶりに決選投票となり、過半数を獲得できない首相が誕生するという45年ぶりの事態となりました。また、衆議院の常任委員会など27ある委員長等のポストのうち、予算委員長や憲法審査会会長など12の委員長に野党議員が就くことになりました。これらも選挙結果の反映です。
このような政治状況の変化は、安倍、菅、岸田政権と10年以上にわたって続いてきた平和、暮らし破壊の強権政治をストップさせ、国家主義、新自由主義の自民党政治を大きく転換させる可能性を高めています。
野党第一党が伸長して政権交代の可能性が生じたもとでも、一部の野党が自公との「部分連合」を志向し、首班指名選挙で自党党首に投票して政権交代に後ろ向きの姿勢を示すなど、自民党補完勢力による要求実現の妨害や、野党第一党に譲歩を迫る動きが強まる可能性にも留意が必要です。
自民党政治にかわる政治の姿はなお流動的です。また、アメリカでの再びのトランプ政権の誕生など、国内の政治にも影響する国際社会の動きも激しくいなっています。それだけに、切実な要求の実現を求める市民運動との共闘をそれぞれの課題で大きく広げると同時に、今回の政治の変化を自民党政治にさよならを告げる「終わりの始まり」としていく「さよなら自民党政治」の大運動の引き続きの強化が求められます。
本交流会では、第一に、国内外の激動する情勢のもとで「要求と政治をつなぐ」革新懇の任務発揮の条件と必要性が高まっていることを共有し、自民党政治によって壊され、切り刻まれてきた暮らし、平和の基盤の回復、切実な要求の実現を求めるたたかいを強めることを確認しあいます。
第二に、今回の政治変化は、自民党政治の行きづまりの大本にある異常なアメリカ追従と大企業中心の政治からの転換を迫る世論と運動を高める好機です。革新懇の「3つの共同目標」を高く掲げた取り組みを改めて強めることを確認しあいます。
第三に、以上の取り組みを全国的に広げ、世論を動かすうねりにしていくためにも、革新懇づくりに目標を持って取り組むことを確認しあいます。
来年夏には、参議院選挙と国政にも直接影響する都議会議員選挙が予定されています。今回の政治変化をさらに推し進め、自民党政治にかわる新しい政治を求める市民の声と運動をさらに大きくし、政治の転換をめざす統一戦線運動への展望をひろげていくため、引き続きの奮闘を確認しあいましょう。
〇 「自民党政治」の何を問題とするのか(自民党政治の行きづまりとは)
総選挙での自民党の歴史的な敗北は裏金問題が直接的な要因ですが、その根底には安倍政権から岸田政権と続いた政治の酷さへの市民の批判と怒りがあります。
石破首相は自民党総裁選挙で、そのような政治とは異なる方向をめざすとしていたにもかかわらず、裏金問題を理由に非公認とした議員を総選挙後に自民党会派に復帰させるなど安倍、岸田政治を引き継ぐ姿勢に転じ、「変われない自民党」を露見しました。このことへの批判の強さは、総選挙後の内閣支持率の低迷にも示されています。
金権腐敗と「声を聞かない」自民党政治に、市民は辟易しているのです。
一つに、派閥ぐるみの裏金づくりという組織的犯罪は、自民党の根深い金権腐敗の構造にもとづいています。1980年代末以降、金権腐敗事件が相次ぎ、「政治改革」が唱えられましたが「小選挙区制の導入」にすりかえられ、「企業・団体献金の禁止」は政党と政党支部への企業・団体献金と、政治資金パーティー券の企業・団体の購入という二つの大きな「抜け穴」を残しました。この「抜け穴」を利用して巨額の裏金づくりをシステム化したのが裏金問題です。とりわけ、自民党「一強」のもとで政治を私物化し、強権的に政治を動かしてきた自民党「安倍派」に裏金議員が多く存在したことは象徴的です。
その自民党は、総選挙後も、企業・団献金禁止などに後ろ向きの姿勢です。
二つに、2014年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定から10年が経過しました。この間、集団的自衛権行使に法的根拠を持たせる安保法制(戦争法)の強行(2015年)、「戦争法」を具体化し敵基地攻撃能力保有に道を開く「安保3文書」の閣議決定(2022年)、「敵基地攻撃」可能な武器などを調達する大軍拡予算の強行(2023年度以降)と、憲法の平和原則を逸脱する「戦争する国づくり」が一気呵成に進められてきました。
その背景には、中国封じ込めのために「同盟国」を動員し、自衛隊をアメリカ軍のもとに組み入れようとするアメリカの世界戦略への自公政権の追従があります。
同時に、アメリカの圧力も利用しながら改憲を狙う、戦前の国体思想に裏付けられた国家主義復活を目論む動きがあることも見過ごせません。
これらのことが、大軍拡と大増税による暮らし破壊と軍事同盟、軍事ブロックへの積極的な加担を強め、特定秘密保護法や共謀罪などの基本的人権抑圧の「有事法制」の整備・強化などにつながり、社会全体の右傾化を進行させる要因となっています。
軍事大国化に偏った政治は、東アジアの国々との軋轢を強め、軍事的緊張だけを高め、「抑止力対抑止力」の軍拡競争を激化させ、日本が戦争にまきこまれる危険性を高めています。
「日米同盟は日本外交の基軸」とする政府のもとで、「戦争国家」への動きが加速するばかりです。
三つに、「儲けの最大化」への政府の後押しを求め続ける大企業と、日米構造協議などを通じて市場開放を迫るアメリカの圧力もあって、90年代半ば以降、規制緩和と民営化を柱とする新自由主義改革が間断なく続けられてきました。
とりわけ、安倍政権以降の「アベノミクス」は、大企業の儲けの最大化と株価高騰が経済政策の中心課題とされ、内需の要である労働者の実質賃金の低迷や不安定雇用労働者の増加がより深刻になりました。実質賃金は2012年の404万6000円から23年の371万円へ、年収で33万6000円も減少しています。非正規雇用労働者が労働者全体の4割弱を占め、さらにフリーランスなどの非雇用で働く人も増え続け、分単位で働く「ネットバイト」や「オンコールワーク(呼び出し労働)」なども広がっています。企業の都合で、法的保護もなく、短時間、低賃金で働かされる「働き方」の広がりが、深刻な貧困を拡大し続けています。
この労働者の状態悪化が世代間分断の温床となり、少子化や地域経済の疲弊、闇バイトなど、様々な社会問題の元凶となっています。
しかし自公政権は、労働時間や解雇規制の緩和など労働者保護をさらに後退させる労働法制改悪などの新自由主義の政策を進めようとしています。
四つに、アベノミクスの目玉とされた「異次元の金融緩和」の失敗で円安がとまらず、輸入頼みの政策の影響もあって、2021年後半から物価が高騰し続けて市民のくらしを苦しめています。
その一方で輸出大企業を中心に企業は儲けを増やしており、2023年の企業収益は、営業利益・経常利益ともに過去最高で、前年比の伸びは営業利益で 14.4%、経常利益で 12.0%となりました。例えばトヨタは2023年度の営業収益が日本企業で初めて5兆円を超えました。
資本金10億円以上の大企業の内部留保(法人企業統計)は、2023年度で539.3兆円と過去最高額となり、前年度と比較しても27.9兆円(5.5%)も積み増ししました。一方で、コロナ禍以降急増した子ども食堂は、2023年度時点で全国9123ヵ所と公立中学校とほぼ同じ数になっています(民間団体調査)。
物価高騰のもとで進む富の偏在に対し、自公政権はその是正策をとろうとしないばかりか、AI・半導体や軍需産業への公的支援など、大企業に多額の税金をつぎ込もうとさえしています。
五つに、国連の女性差別撤廃委員会は10月29日、日本の女性政策について最終見解を公表し、民法の規定を見直して選択的夫婦別姓制度を導入することなどを勧告しました。「別姓勧告」は4回目で、「差別的な条項があるとしたこれまでの勧告に対し、何の行動も取られていない」と厳しく批判しました。このことに明らかなように、日本の人権後進性は顕著です。
世界経済フォーラムが毎年公表する各国のジェンダー平等指数で、2024年の日本は世界118位でした。G7の中で最下位ですが、問題は他の先進国がジェンダーギャップ指数を改善している中で、日本は全くと言っていいほど改善しておらず、むしろ2010年代以降はジェンダーギャップが拡大していることです。
自民党が、家父長的家族観に立つ宗教右派の影響を受けていると同時に、男女役割分担論に立った社会政策に固執しているからにほかなりません。
六つに、内閣人事局を介した官僚人事や、日銀、NHK、最高裁判事、学術会議などへの政権の介入が、それらの独立性を歪め、内閣への権限集中と権力の私物化が、安倍政権以降一気に強まりました。
それが行政の中立性を歪め、政治、行政の私物化を進め、「モリ・カケ・サクラ」疑惑、「安倍国葬」の強行など民主主義を毀損する深刻な問題を引き起こしてきました。また、三権の中での行政優位が強まり、立法、司法の行政チェックが後退し、立憲主義の形骸化が進んでいます。
「さよなら自民党政治」の大運動は、憲法に基づく立憲主義の政治を取り戻し、基本的人権の実現を最優先する当たり前の政治を求める取り組みです。
〇 総選挙後の政治の変化をいかす運動課題
第一に、総選挙で各政党が掲げた公約ともかかわって、市民の要求や願い実現の障害として自民党が立ち塞がっていた課題が明らかになっています。
政治が変化したもとで、野党が力を合わせれば実現できる課題で、要求を軸とする共闘(課題別共闘、一点共闘)を前進させ、要求前進をめざしましょう。
具体的には、企業・団体献金禁止など「政治とカネの問題」の抜本的是正、選択的夫婦別姓、同性婚の実現など個人の尊厳実現への前進、紙の健康保険証廃止の中止・凍結、最低賃金1500円の速やかな実現、学費値上げストップ・教育費負担の軽減と学校給食無償化、医療、介護、保育などケア労働者の処遇改善と税・社会保障の富の再配分機能の強化、食料・エネルギー自給率の改善、能登半島地震・豪雨災害復旧支援の強化、大軍拡、軍拡増税阻止などの課題です。
2024年度補正予算案、2025年度予算案や様々な法案の国会審議に向け、運動と共闘をひろげ、各政党への要請を積み上げ、政治の変化を生かして成果を勝ち取るために力を寄せ合いましょう。
第二に、革新懇の「3つの共同目標」を高く掲げ、その目標への接近が「さよなら自民党政治」のたたかいを前進させる力であること広く訴える取り組みを強めましょう。
自民党政治の行き詰まりの大本に、日米安保条約を憲法の上に置き、異常なまでのアメリカ追従の軍事、経済政策をとり続けていることがあります。
「戦争する国づくり」をストップさせ、辺野古新基地建設をはじめとする南西諸島の「軍事要塞化」や他国攻撃を可能にする武器の保有、激化する軍事共同訓練、自衛隊の「軍隊化」などをやめさせるには、日米安保条約という軍事同盟と向き合わざるを得ません。
アメリカの世界戦略に組み込まれて中国などを「仮想敵国」とする外交から、憲法を生かした平和外交に転換するうえでも、日米安保条約が問題となります。
「誰の子どもも殺させない」、「二度と白衣を戦場の血で汚さない」、「教え子を再び戦場に送るな」などの平和への決意を次の世代に引き継ぐには、この10年余りの日米軍事同盟の強化を告発し、その危険性を訴えで修正を迫り、軍事同盟からの離脱を政治の課題に押し上げていくことが不可避です。その点で、日米安保条約の廃棄の目標に向かう取り組みの強化は今の課題です。
アメリカでのトランプ政権誕生でさらなる武器の爆買い、大軍拡の押し付けが懸念される情勢のもと、軍拡反対の取り組みとも結んで、日米安保条約の市民にとっての危険性、問題点を明らかにし、訴えを強めていくことを重視しましょう。
繰り返される米兵犯罪や、PFAS漏出などの基地被害が続く元凶になっている日米地位協定の抜本改定や「東アジアの平和の枠組み」づくりを求める市民運動をひろげましょう。
憲法9条改憲阻止の取り組みとも一体で、憲法をいかした政治への転換を強く求めていきましょう。
消費税増税の一方での法人税率引き下げや大企業・富裕層優遇税制の拡充、労働者派遣法をはじめとする労働法制の改悪、税・社会保障への負担を企業のコストとして自己責任を押し付ける社会保障改悪などの大企業優先の政治が、市民の暮らしを壊し、格差と貧困の拡大に歯止めがかからない状況を招いています。
大企業の内部留保は、安倍政権以降に急増しました。日本経済の停滞が長期化し、実質賃金を漸減させ、中小零細企業への下請け単価引き下げを強制する一方で、大企業の収益増と株価の高騰が続いてきたことは、経済の歪みの最ものあらわれです。
最低賃金1500円要求をすべての政党が掲げざるを得ないほど歪みが顕著な日本経済の是正を緊急課題とし、「最賃引き上げのため中小企業支援の財源に内部留保課税を」などの攻勢的な要求での共闘を広げ、国民本位の経済への転換という目標の実現をめざし、世論と運動づくりに力を寄せ合いましょう。
〇 要求前進をめざす運動の構え
革新懇運動では、「3つの共同目標」をめざして「三つの任務」で果たすことを確認してきました。
一つには、現実の国政の焦点課題をはじめ、各分野、地域要求の実現に全力を尽くしながら、一致する課題での共闘を維持、発展させる「要求と政治の架け橋」の任務です。二つには、戦争法廃止と立憲主義の回復をめざす「『市民と野党の共闘』の支え手」としての任務であり、三つには生活向上、民主主義、平和の「3つの共同目標」の合意を広げることを独自に追求する「革新統一戦線運動前進の担い手」の任務です。
政治情勢が変化し、自民党政治にかわる政治の模索が本格し始めたもとで、その条件をいかす取り組みの構えが求められています。
とりわけ、様々な課題での一致する要求に基づく共闘をひろげ、それを政治につなぐ「要求と政治の架け橋」としての革新懇、賛同団体の役割は、これまで以上に重要です。
同時に、課題別の共闘を横でつなぎ、自民党政治にさよならを告げる「さよなら自民党政治」の大運動を前進、発展させていくことは、「革新統一戦線運動の担い手」としての革新懇ならではの任務であり、各革新懇と賛同団体が力を寄せあう役割です。これらの点を確認した取り組みの具体化、探求を進めましょう。
来夏には参議院選挙、東京都議会議員選挙が予定され、早い時期の総選挙の可能性も指摘される情勢です。各地の自治体選挙も含め、政治の変化をさらに前に進めるためにも、「要求と政治の架け橋」と「革新統一戦線の担い手」としての任務、役割を日常的に発揮し、情勢を攻勢的に変えていくために力を尽くしましょう。
総選挙での「市民と野党の共闘」の取り組みは様々な困難に直面し、地域的、限定的なものに留まりましたが、共闘をより深化させた地域では現行の小選挙区制という選挙制度のもとでの共闘への確信を深めています。
変化した政治情勢のもとで、変化を前に進め、揺り戻しを許さないためにも、市民連合の政策要望に各野党が「合意」して総選挙がたたかわれた経緯もふまえた「市民と野党の共闘」の新たな発展の流れをつくり出すために、力をあわせましょう。
〇 「三つの任務」を実践できる革新懇づくり
2023年5月の全国革新懇の総会以降、兵庫・はりまなか革新懇(2023年9月)、名古屋・東区革新懇(2023年12月)、千葉・流山革新懇(2023年12月)、千葉・睦沢(むつざわ)町民の会(2024年5月)、長崎・壱岐革新懇(2024年5月)、兵庫・西脇多可革新懇(2024年11月)の地域革新懇が新結成され、山形・山形地域革新懇(2023年11月)、東京・千代田革新懇(2023年12月)、愛知・名古屋中村区革新懇(2024年11月)が活動を再開しました。この交流会は、47都道府県、562地域、76職場、19青年の革新懇で迎え、各賛同団体と力をあわせて取り組みを積み重ねています。
県革新懇が地域革新懇結成の目標を明確にし、結成に向けた援助を強めたところでの新規結成が一つの特徴です。
また、地域要求での共闘を積極的に位置づけ、学習会や講演会、行政要求、様々な要求運動を横でつなぐ「コーディネーター」の役割などに取り組み、事務局会議や世話人会議を定期的に行っている革新懇では、革新懇ニュースの拡大なども進んでいます。
各賛同団体でも「組織拡大」を最重要課題に位置付けて取り組みが行われています。
しかし、総じて高齢化や世代継承の遅れに多くの革新懇が直面し、ニュース読者の後退や活動の停滞などの課題を抱えています。
革新懇結成時もそうであったように、自民党が危機に直面した時に補完する政治勢力が伸長し、自民党政治からの変化が停滞することは、幾度も繰り返されてきました。今の「さよなら自民党政治」の好機も、市民運動の広がりがなければ同様の壁に突き当たる危険性は存在しています。
それを許さないためにも、「3つの任務」を実践する革新懇づくりが必要です。その点を再確認しあい、組織拡大と地域革新懇の結成、革新懇ニュースの普及の「革新懇づくり」と日常的な運動の活性化に力を寄せ合いあいましょう。
高齢化が進むもとで、一人に仕事を集中させない「集団的な組織」運営をめざしましょう。
最近行われた各地の自治体首長選挙で、宣伝媒体としてのSNSの効果が言われています。青年層への影響が強調されると同時に、年代を問わずに有効な媒体となっているとの指摘もあります。
マスコミも含めた既存の「権力構造」への不満を掬い取る側面の一方で、偽情報の拡散やネットビジネスの選挙への介入など民主主義の危機を招きかねない弊害も見え始めています。
これらの点での問題意識の共有と、宣伝媒体としての「SNS活用」の両面からの取り組みの探求を深めます。
以 上