全国革新懇第43回総会「報告と提案」

2024年5月18日

全国革新懇第43回総会

【総会スローガン】

日本をダメにした自民党政治にさよならを! 「市民と野党の共闘」の再構築・発展と「3つの共同目標」を高くかかげて

 

はじめに

(1) 実質賃金が連続してマイナスとなっている市民の暮らしをアベノミクスに起因する物価高騰が直撃する一方で、輸出大企業は史上空前の利益を上げ続けています。失敗が明らかなアベノミクスを継承する経済政策から、市民のくらしを直接支える政策への転換が求められていますが、岸田政権は有効な対応を行おうとしません。そのことへの市民の批判が高まり、内閣支持率が不支持率を下回る状況が2023年7月から連続しています(NHK世論調査)。

 この状況に加え、23年末に政治問題化した政治資金パーティーによる自民党派閥での組織的な裏金づくりの犯罪行為と、裏金問題の全容解明にも「カネと政治」問題の抜本的是正にも背を向ける自民党への怒りと不満が加わり、内閣支持率は20%台前半以下に軒並み低下し、自民党支持率も下がり(NHK世論調査)、政権交代を48%が求める状況となっています(JNN世論調査、2024年5月)。

 その市民の怒りが選挙で示されたのが、4月28日投票でたたかわれた衆議院補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)での自民党全敗という結果でした。市民の怒りの前に自民党は、東京15区、長崎3区では候補者を擁立できず、野党の共闘との1対1の対決構図となった島根1区では、保守地盤にもかかわらず大差で敗北しました。

 自民党政治に対する市民の不満や怒りは、場当たり的な弥縫策や「看板の架け替え」で収まるものではなく、自民党支持層の「岩盤」を突き崩す状況となっており、政権交代によって自民党政治を終わらせる好機が訪れています。

(2) 戦争法(安保法制)の廃止と立憲主義の回復を一致点とする「市民と野党の共闘」は、2016年4月の衆議院補欠選挙〈北海道5区〉以降の国政選挙で着実に成果を積み上げ、沖縄県、岩手県知事選挙をはじめとする自治体首長選挙や東京都議会議員選挙などの自治体議員選挙にも共闘を広げてきました。

 2021年10月総選挙で、「市民と野党の共闘」への恐れを抱いた自公などの勢力から、安保・外交政策などをテコとする共闘分断と共産党排除の反共攻撃が激烈におこなわれ、政治を変える結果を作り出せませんでした。これに便乗した「共闘の失敗」をことさらに強調する攻撃もあり、共闘には様々な困難が生じています。しかし、4月28日の衆議院補欠選挙・東京15区では、反共攻撃をテコとする共闘分断の攻撃を乗り越えて、市民連合と政策協定を結んだ「市民と野党の共闘」候補が自民党補完勢力の押す候補との激戦を勝ち抜き、「市民と野党の共闘」の力を示しました。

 また、入管法改悪反対や健康保険証廃止反対、インボイス制度導入反対、選択的夫婦別姓実現などの課題で新たな市民運動が活性化し、それらの課題での要求を実現する障害が自民党政治であることにも広く市民の目が向き始めています。

 「市民と野党の共闘」を草の根から支え、分野別、課題別要求での共闘を政治転換の統一戦線運動につなぐ革新懇運動の出番の時を迎えています。

(3) 本総会では、2025年の総会までに総選挙がおこなわれる想定のもとに、「市民と野党の共闘」の再構築を繰り返し働きかけ、様ざまな市民運動との共闘を深め、自民党政治のいきづまりを克服する「三つの共同目標」を高くかかげて統一戦線運動につなぐ革新懇の役割を再確認します。

「自民党政治にさよなら」を告げる世論と運動づくりに奮闘し、政治を変えるために全力を挙げる決意を固めあいましょう。

Ⅰ この1年間の取り組みの特徴

 本総会を47都道府県革新懇、560地域革新懇、76職場革新懇、19青年革新懇と22準備会(地域18、職場1、青年3)の724革新懇の構成で迎えました。この革新懇と賛同団体が力を寄せ合い、各分野、地域で要求にもとづく共闘の前進、「市民と野党の共闘」の再構築と政治を変える統一戦線運動への発展をめざして奮闘しました。

 

1 ロシアのウクライナからの撤退、ハマスの人質解放とイスラエルのガザからの撤退を求める取り組みを全国各地で展開

(1) 2022年2月のロシアのウクライナ侵略に対し、ロシアの国際法・国連憲章違反を糾弾し、即時撤退をもとめる集会や宣伝行動などに継続して取り組みました。

 侵略から2年目となった24年2月24日に東京・青山公園で開催された「ウクライナに平和を」の集会に参加し、各地でもロシアのウクライナからの撤退を求めて兵庫・はりまなか革新懇の宣伝行動などが取り組まれました。

(2) 23年10月7日にパレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルを攻撃し市民を殺害するとともに人質を拉致しました。このことへの自衛の措置だとしてイスラエルは、ガザへの空爆や地上侵攻をおこない、一方的な攻撃と市民封じ込めを半年以上にわたって続け、5月4日時点でガザの住民は34600人以上が犠牲になり、100万人が餓死の危機に瀕するという重大な人道問題が生じています。

(3) 当初、ハマスのテロ行為を非難する一方でイスラエルの侵攻等を自衛の措置とする受けとめがあった日本などの対応も、人道危機の深刻化とイスラエルの行為をジェノサイドと批判する国際社会の世論の高まりの中、24年3月26日の国連安全保障理事会では即時停戦と人質解放を求める決議が採択(アメリカは棄権)されました。このような国際社会の世論の変化は、各国の市民社会が「ジェノサイドやめろ」の一致点で連帯し、行動をくりかえしたことが強く反映しています。

(4) 国内でも、集会やデモ行進、街頭宣伝行動などが各地で取り組まれ、青年が積極的に参加する状況がうまれました。京都革新懇、大阪・寝屋川革新懇、東京福生革新懇など、各地で行動が繰り返され、青年ネットAICHIではパレスチナ問題での学習会に取り組みました。

 

2 さらに加速する「戦争する国づくり」に抗して奮闘

(1) 2022年12月に安保3文書を閣議決定した岸田政権は、その具体化を担保する財源確保法や2023年度、24年度予算を成立させ、敵基地攻撃を可能にする長距離ミサイルの購入や開発、ミサイル配備のための弾薬庫などの施設建設、自衛隊基地の整備・強靭化などを加速させました。

とりわけ、沖縄・南西諸島では台湾有事を想定した「要塞化」が急ピッチで進み、自衛隊と米軍の共同訓練も頻繁に行われました。また、軍需産業の育成政策を強め、殺傷能力ある武器の海外輸出に踏み出し、アメリカとの武器の共同開発にも合意するなど、「死の商人国家」に成り下がる動きを強めました。

 そのような大軍拡とも軌を一にするように改憲論議も加速し、岸田首相が自民党総裁任期中の今年9月までの改憲を再三明言し、衆議院憲法審査会では緊急事態の際に国会議員の任期延長する改憲条文案の作成に改憲政党が前のめりの姿勢を示す状況となりました。

(2) このような動きに抗して神奈川革新懇は、横浜ノースドックへの揚陸艦配備に反対する署名や集会などに取り組みました。

 沖縄県うるま市では、陸上自衛隊の訓練施設建設用地として確保がめざされたゴルフ場跡地買収に対し、地元住民の保守、革新をこえた機敏な反対運動がうるま市のみならず沖縄県全体を巻き込み、防衛省にそれを断念させるという大きな成果を勝ち取っています。

明文と実質両面での憲法破壊や戦争する国づくりに反対する取り組みは、5月3日や11月3日の憲法集会や毎月の「19日行動」などで全国的な取り組みを集中し、大軍拡・改憲反対の署名行動や宣伝行動、講演会など多彩な取り組みが全国で展開されました。

栃木革新懇は県民集会、パレードに取り組み、宮城革新懇は毎月の定例行動を実施しました。千葉県革新懇は、事故が相次ぐオスプレイの飛行停止、配備撤回を求めて共同の署名行動に取り組みました。

(3) 辺野古新基地建設断念を求める国会請願署名に結集して全国で具体化し、全体で約56万人分を提出しました。また、辺野古埋め立て訴訟での沖縄県を支援する諸行動や裁判所要請などにも取り組みました。

 安保破棄中央実行委員会などとも共同して、「『戦争する国』と『南西諸島の戦場化』は許さない学習会」(6月6日)、「沖縄と連帯するつどい 戦争する国は許さない10.2in東京」(10月2日)や、「沖縄連帯ツアー(6月10日~12日)、(2024年4月4日~6日)に取り組みました。

沖縄革新懇は、たたかいの節目で開催される県民集会に結集し、京都・伏見革新懇は玉城デニー沖縄県知事への応援を呼びかける宣伝行動をおこない、神奈川革新懇、大阪革新懇は沖縄と連帯するつどいを開催しました。

 

3 くらしの改善要求、民意から遠のく悪政を草の根から追及

(1) 軍事優先、大企業の儲けの確保優先の自公政治のもとで、くらし改善の要求が強まり、地域草の根から共闘が広がっています。

 2023年1月から取り組みを開始した「大軍拡、大増税に反対する署名」はくらし改善要求とも結んで広げられ、2024年通常国会冒頭までに95万7142人分が国会に提出され、継続されています。

 政府の廃止方針決定後も健康保険証廃止に反対するたたかいが粘り強く取り組まれ、革新愛知の会・岡崎革新懇は健康保険証の存続を求める議会要請に取り組みました。

 消費税廃止とインボイス制度の中止を求める個人事業者のたたかいが全国に広がり、全商連などがたたかいを支えて共闘が前進しました。

(2) 2023年通常国会で争点となった難民申請者を強制送還させるなどの入管法改悪に反対の声が広がり、国会前での集会や全国各地での宣伝行動などが取り組まれました。革新愛知の会・緑区革新懇では法案成立阻止の宣伝行動を行いました。

 2022年度時点で全国自治体の約3割(451自治体)に広がり、国の施策としても検討が始まっている学校給食の無償化の実施を求める取り組みが全国的に広がっています。東京革新懇・西東京革新懇では署名行動や自治体要請行動に取り組みました。

(3) 社会保障予算の抑制、医療・介護保険制度の改悪が続くもとでの取り組みも全国に広がっています。新潟革新懇・大江山革新懇は、「老人憩の家をなくさないで」の署名に取り組みました。

 能登半島地震の発生直後から、各地で救援募金の活動や「万博より被災地支援、復興を」の世論づくりの取り組みが展開されました。岩手県革新懇、宮城・多賀城革新懇、兵庫・明石革新懇など、年明けから取り組みが旺盛に展開されました。

 準備が強引に進められる「夢洲万博(大阪・関西万博)」の中止をもとめ大阪革新懇、兵庫革新懇などが講演会、学習会、シンポジウムなどに繰り返し取り組んでいます。

(4) 能登半島地震で北陸電力・志賀原発の電源が失われるなどの事故が起きたことあり、原発再稼働、推進政策への転換をただす取り組みが再び強まっています。福島原発事故から13年目の「3.11」も節目に、埼玉革新懇・鴻巣革新懇、革新の会しが・長浜革新懇などが集会や合同街頭宣伝行動などに取り組みました。

 教育勅語を引用する職員研修を行った市長への抗議活動(ヒロシマ革新懇)、産業廃棄土砂の不適切盛土問題での行政追求(ヒロシマ革新懇・安佐南革新懇)、自衛隊への名簿提供の違憲性を問う裁判支援(奈良革新懇)、統一協会施設建設反対の取り組み(東京革新懇・府中革新懇)など、身近な要求での運動が各地で具体化されました。

 

4 「市民と野党の共闘」の再構築をめざして草の根から奮闘

(1) 様々な困難に直面している「市民と野党の共闘」の再構築をめざす取り組みが多様に行われてきました。

 全商連などが取り組んだインボイス中止を求める取り組みでは、「ストップ インボイス」の超党派議員連盟が立ち上がりました。食料・農業・農村基本法改悪に反対する農民連などの議員要請には立憲野党の議員が多数応じています。

 全労連・国民春闘共闘委員会が取り組んでいる「最低賃金全国一律制度実現」を求める署名を超党派の議員が受け取っています。このような取り組みを通じて、要求と政治の関係を可視化しました。

(2) 衆議院小選挙区の「区割り」変更に伴い、選挙区ごとの市民連合の再編・結成も各地で進められました。とりわけ東京では、5選挙区増のもとで全区での市民連合結成がめざされ、各地域革新懇が積極的な役割を発揮し続けています。

 愛知10区では、「市民と野党の共闘」前進の立場での立候補を予定している候補者(立憲民主党)と市民連合との政策協定が進み、様々な妨害が生ずるもとでも共同の街頭宣伝の継続などに革新懇が役割を発揮しています。

 4月16日に告示された衆議院議員補欠3選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)は、限定的な選挙であることもあって、すべての選挙区が野党共闘でたたかわれることとなり、自民党やその補完勢力の候補との競り合いに勝ち抜いて3選挙区とも共闘の候補が勝利しました。

(3) 自民党の組織的な「裏金づくり」が大きな問題となる中、各地の革新懇は街頭宣伝などで世論に訴えるとともに、学習会、講演会などで問題の本質や抜本的改革の方向を深めあい、自民党政治を終わらせる運動に繋げています。

 革新いばらぎは「新春のつどい」で自民党政治を終わらせる取り組みを意思統一し、革新あいちの会は連続学習会を開催し、兵庫・はりまなか革新懇はスタンディングに取り組みました。

 

5 岩手県知事選挙、京都市長選挙などの取り組み

 2023年9月3日投票の岩手県知事選挙、2024年2月4日投票の京都市長選挙を当該府県革新懇の要請もふまえ、全国支援に取り組みました。

 近隣府県革新懇の協力や賛同団体の取り組みの位置づけも受け、それぞれ数次の統一行動に取り組みました。岩手県知事選挙は支援した候補が一騎打ちを制して5回目の当選を果たし、激戦になった京都市長選挙は僅差で支援候補が惜敗しました。

 

6 困難に立ち向かって成果を作りだしている革新懇づくり

(1) 昨年の総会以降、兵庫・はりまなか革新懇(23年9月)、名古屋・東区革新懇(23年12月)、千葉・流山革新懇(23年12月)、千葉・睦沢町民の会(2024年5月)が新たに誕生しました。県都の独自の運動発展をめざして山形・山形市革新懇(23年11月)が、住民本位の街づくりの取り組みを通して東京・千代田革新懇(23年12月)が活動を再開しました。

 新結成の革新懇はいずれも、県革新懇が地域革新懇結成の目標を持って働きかけかを強めてきたことが反映しています。

(2) 職場革新懇では、コロナ禍で控えていた活動を東京の二つの銀行革新懇(学習例会)、西武革新懇(サマーパーティーなど)で再開されました。また、ニュース発行や学習会、事務局会議、街頭宣伝などを愛知・国公革新懇(学習会)や県職トークの会(宣伝行動)、金融革新懇(学習会)、トーエネック革新懇(ニュース発行)が続けています。

 大阪銀行革新懇はニュース発行の再開と講演会に取り組み、大阪職場革新懇連絡会は月1回の交流で互いを励まし合っています。大阪損保革新懇は、「ビッグモーター事件と損保会社の責任」の声明発表や「損害保険・代理店手数料ポイント制を考える会」としての公正取引委員会への集団申告など多彩な取り組みを行いました。兵庫・保育革新懇は、さまざまな活動に取り組む中で、結成当時から会員を7倍化しています。

 奈良革新懇は総会方針で「教育や公務労働の職場革新懇づくりにOBの方の協力も得ながら挑戦する」とし、革新・あいちの会の総会方針では「公務労働のなかで革新懇づくりをめざす」としています。

(3)  青年革新懇の愛知・青年ネットAICHIはパレスチナ・ガザ問題の学習会を、京都・HOME‐はんなりは登山を通じて環境とまちづくりを考え合い、大阪・交野青年革新懇は地域の戦跡ウオーキング、神戸・チームアンカーは朝鮮料理を作りながら在日コリアンについて学び合う企画や陶芸体験に取り組みました。

 近畿3府県の青年革新懇が合同企画を継続し、全国各地の青年革新懇にも呼びかけたオンライン交流会を2023年8月と12月に開催(6府県の青年が参加)し、香川・つながるねっとの活動再開につながりました。

 青年革新懇の活動継続・発展は、定例会議の開催、「全国革新懇ニュース」の配達・集金などの体制づくり、多彩な企画を通じた新しい仲間づくりなどが力になっています。

また、県、地域革新懇も、青年の活動や要求を取り上げ、取り組みへの理解を広げるなどのサポートを行っています。

 賛同団体、市民運動の青年の企画として、11月3日憲法公布記念日に「軍拡反対、憲法生かせ」宣伝行動に、3月16日には「自民党政治にモノ申す」宣伝行動・シール投票に東京・新宿で取り組みました。

(4) 「全国革新懇ニュース」は28,364部で総会を迎えました(5月13日時点)。2018年に築いた最高現勢30,442部から2千部あまり、前年総会との比較でも600部以上の減紙で、減少幅が拡大しています。

 この1年間に限っても、減紙の要因としては高齢化の影響が顕著で、活動継続が困難となった革新懇での大きな数の減少が生じています。その中で、今年度の増紙申請数は260部でコロナ禍前(2016~19年)の平均756部から3分の1に減少しています。ニュース読者の拡大、革新懇会員の拡大の取り組みの鈍化がニュースの減少に直接影響しています。

 毎号多彩な方が登場する「全国革新懇ニュース」には、読者からの反響が多く寄せられています。転載要望も少なくなく、コピーを授業で活用したいとの要望では、「学術的にも先端の問題提起」という声を寄せられました。また、各地域・職場・青年革新懇の生き生きとした取り組み報告に励まされているという感想も寄せられています。ニュースのこのような魅力も前面に押し出した拡大運動が期待されます。

(5)  昨年5月の総会や代表世話人会を「ハイブリッド(オンラインと実参加)」で開催し、「沖縄と連帯するつどい」などは事後にYouTubeで配信するなど、参加者拡大と情報発信に留意してきました。

 各革新懇もシンポジウムや学習会のYouTube配信に工夫しており、大阪革新懇のシンポジウム「アカンやろ!夢洲万博~傷の浅いうちに勇気ある撤退を~」は1018回、福岡県革新懇の「自民党裏金問題の深層―赤旗日曜版スクープの舞台裏」講演会(山本豊彦・しんぶん赤旗日曜版編集長)は7240回視聴されています。

 「全国革新懇第42回総会記録集」(23年6月、1665部普及)、「革新懇紹介リーフ」(23年11月、19280部普及)を作成し、活用を呼びかけました。

 茨城革新懇は「あなたもぜひ茨城革新懇へ」を、新潟県革新懇は新発田革新懇と共催した講演会のDVDを制作しました。

 宮城革新懇が『43年のあゆみ』を、神奈川革新懇が「『ひらく未来』シリーズの第3弾」を発行しました。 

 

Ⅱ 情勢の特徴点

1 運動と関連する国際情勢

(1) ロシアのウクライナ侵略は、2年を経過しても国際法、国連憲章違反の侵略行為が続き、国際社会に深刻な分断と亀裂を生じさせています。アメリカのバイデン政権は、この問題を「民主主義対専制主義のたたかい」と位置づけて対立を激化させ、岸田政権もこれに追従してアメリカなどとの軍事的一体化、日本での大軍拡を急ピッチで進める口実にしています。

 国連は、22年、23年の2年間で、ロシアの行為を国連憲章違反と非難し、ウクライナからの撤退を求める総会決議を4回行い、これらを再確認するG20の首脳宣言も採択されています。覇権主義をむき出しにする大国に対し、グローバルサウスなどの国々が、対話による紛争解決、国際秩序の回復を求める動きを強め、軍事ブロック化に与しない立場を明確に示しているのが一つの特徴点です。

(2) イスラエルの大規模攻撃でパレスチナ・ガザ地区の人道状況は危機に直面し、市民の犠牲も増え続けています。加えて、イスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃して犠牲者を出したことへの報復としてイランが大量のミサイルや無人機でイスラエルを攻撃し、さらにこれへの報復だとしてイスラエルがイランへのミサイル攻撃をおこなったことから、中東全体への戦争の拡大が懸念される事態となっています。

 国連では、即時停戦と人質解放を求める決議がおこなわれ、国際司法裁判所に南アフリカがイスラエルのジェノサイド条約違反を提訴するなど国際法と国連の枠組みの中で事態の鎮静化をはかろうとする努力が続けられています。

 しかし、アメリカやドイツなどがイスラエルの国際法違反を非難せず、軍事支援を継続していることがイスラエルの強硬姿勢を支えています。その点で、アメリカのダブルスタンダードやイスラエルの強行姿勢に毅然とした対応をとろうとしない日本政府も同様の位置にあり、即時停戦を迫る具体的な動きを日本政府に迫っていく取り組みの継続、強化が求められています。

(3) ウクライナへの侵略戦争も契機に、第2次世界大戦後の国際社会の秩序が揺らぎ、植民地主義的な動きや軍事ブロック化への動きが顕在化し始めています。

 南米ベネズエラは2024年4月に、隣国ガイアナの領土の一部を自国の領土とする法律を公布し、対立を深めました。

 ヨーロッパでは、フィンランド、スゥエーデンがNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、インド・太平洋地域では日米、米韓の軍事同盟強化やAUKAS(米・英・豪)の軍事的連携強化を強め、自衛隊と米比両軍との合同訓練に合意し、クアッド(日米印豪)の中国包囲の動きも加速しています。

 これらの動きに対抗するように、北朝鮮のロシアへの武器供与や中国と北朝鮮の連携強化も進んでおり、中東での情勢悪化も含め軍事対軍事の悪循環の危険性はインド・太平洋地域でも高まっています。

それだけに国際法と国連憲章を基礎に、包摂的な対話のルール、枠組み作りを求める国際連帯の取り組み、憲法の平和主義の立場にたった平和の準備を迫る世論と運動づくりが重要になっています。

(4)  国際NGOのオックスファムの発表(2024年1月15日)では、「世界で最も裕福な5人」の資産がコロナ禍の2020年以降に8690億ドル(約126兆円)と約2.1倍に増加する一方で、世界人口の6割を占める貧困層約48億人の資産は0.2%減少し、格差が拡大し続けています。

 このことにも示される制御不能な資本主義の暴走が、気候危機をさらに深刻にし、大国間の覇権争いを強めています。同時に、経済のグローバル化での国際的な交流が深まるもとで、ジェンダー平等や過去の植民地主義にも根を持つ差別構造の解消を迫る人権実現の動きは大きなうねりとなっています。一部の富裕層への富の集中の是正を求め、原発に依存しない気候危機問題の解決を迫り、ジェンダー平等を実現する課題などで、国際社会の前向きの変化にも呼応した国内での運動が求められています。

 

2 自民党政治からの転換は喫緊の課題

(1) 自民党の金権腐敗構造の追求は政治の歪みをただす中心的な課題                                      

1) 自民党の派閥が、政治資金パーティー券の収入の一部を所属議員にキックバックし、あるいは中抜きを黙認して「裏金」づくりを組織的に行っていたことが明らかになり、3名の国会議員と会計責任者が起訴されました。自民党の調査でも85人の議員政治資金収支報告書に収支を記載していなかったことが明らかになり、うちの39名に党規約にもとづく処分をおこないました。

2) 企業団体からの議員個人への献金規制の網をかいくぐる形で、企業・団体にパーティー券を売りさばき、僅少の費用でパーティーを実施して政治資金を確保するだけでなく、裏金づくりの原資とすることを何時から行っていたのかや、裏金の使途、課税問題などの全容は明らかせず、「トカゲの尻尾切り」で国民の批判をやり過ごそうとする自民党の姿勢への国民の批判は根深いものがあります。24年4月の衆議院議員補欠選挙の結果はそのことを端的に示しました。

3) 自民党では、1980年代から金権腐敗事件が相次ぎ、金のかからない政治や企業団体献金の禁止などが繰り返し議論され、税金を政党に直接注ぎ込む政党助成金も創設されるなどの「政治改革」がおこなわれましたが、これが見せかけのものであったことを今回の問題は明らかにしました。

 企業団体献金は、一人ひとりの人格権の保障を最大目的とすべき政治をゆがめ、主権者の政治的自由を侵害するなど多くの弊害があります。また、政党助成金も企業団体献金禁止が前提となっていたことを再確認する必要があります。にもかかわらず、「社会貢献」、「民主主義の費用」などの口実で企業・団体献金を正当化し、「カネによる政治の買収」を自民党や財界は改めようとしていません。

 4) 裏金問題を受けて野党は、企業団体献金の禁止、政策活動費の廃止、政治資金規正法違反での「連座制」の導入などの実現で足並みを揃えており、民主主義をとりもどすためにも政治改革が重要な課題となっています。

 一人当たりのパーティー券購入金額の上限の引き下げや「政治とカネ」の関係の透明化などで糊塗し、企業団体献金を温存する動きを許さない追及が求められています。

 (2) 急速にすすむ「戦争する国づくり」で激化する憲法との矛盾

 1) アメリカ・バイデン政権の「世界戦略」への盲従を強める岸田政権は、2022年12月に閣議決定した「安保3文書」の具体化と対中国包囲惟網への加担、戦闘機も含む武器を輸出する「死の商人国家」への道を急速に進めています。

 その動きをさらにアップデートすることを約束したのが、4月10日にワシントンで交わした「日米共同声明」です。

 2) 同声明は、①米軍の指揮権のもとに自衛隊を置くことになる「作戦及び能力のシームレスな統合」、「それぞれの指揮・統制の枠組みを向上」、②軍事同盟である「AUKUS(オーカス)」と日本の先端軍事技術での協力、③アメリカとのミサイルの共同開発・共同生産、などを宣言しています。

 これらの内容は、憲法の上に軍事同盟をおき、憲法の平和主義を投げ捨て、アメリカの危険な戦争に日本を巻き込むなど市民の安全を脅かすものであり、その危険な道をつき進む自民党政権の姿勢をあらわにしたものです。

 3) 「安保3文書」の決定以降、憲法い改悪を先取りする有事法制とも思える法制度の強行も相次いでいます。

 24年通常国会だけでも、①特定秘密保護法の対象を経済分野にも拡大し、秘密事項にかかわる労働者の個人情報を調査するセキュリーティ・クリアランス制度を導入する法案、②有事の際の国からの地方自治体への指示を包括的に可能にする地方自治法「改定」法案、③食料有事の際に栽培作物を国が強制す食料・農業・農村基本法「改定」法案などが閣法で提出されました。

 4) 南西諸島へのミサイル部隊の配備、自衛隊基地の「強靭化」やミサイル保管のための弾薬庫の新増設、兵站施設や訓練施設整備のための用地買収、土地利用規制法にもとづく注視区域等の指定、自衛隊などの平時からの活用が想定される「特定利用空港・港湾」(16か所)の指定などが次々に進められ、日米合同訓練の質・量の強化も含め台湾有事を想定した米軍と自衛隊の運用の一体化が強められています。有事体制づくりや軍拡の影響が日常生活に及んできました。

 このような有事体制づくりと軌を一にするように、自衛隊幹部の靖国参拝や元自衛隊幹部の靖国宮司への就任など、「国家神道」復活を懸念させるような動きが出ていることも見過ごせない動きです。

 5) 法律や閣議決定による憲法壊しの動きとともに、明文改憲の動きも急速に強まっています。

 岸田首相は24年通常国会の所信表明演説も含め、自民党総裁任期中の改憲に再三言及し、日本維新の会などがこの発言も利用して改憲発議を煽る状況が強まっています。当面の改憲の焦点は、緊急事態時の国会議員の任期延長におかれ、改憲政党間では条文案作成の「作業部会」設置で一致する動きにあり、事態は緊迫しています。

 6) 4月の日米首脳会談では改めて、沖縄の基地負担軽減は「辺野古が唯一の解決策」との合意がなされました。

 この前段で、沖縄県が沖縄防衛施設局の辺野古埋立設計変更申請について、「県民意思の尊重が最大の公益」との立場で不承認としたことの撤回を求める訴訟と、その訴訟での沖縄県の敗訴をふまえた承認を求める国の是正措置の履行を求める裁判で最高裁が国勝訴の判決を下しました。さらに沖縄県が国の是正命令を拒否したことから、国による埋立設計変更承認の代執行がおこなわれ、中断していた大浦湾側の埋め立てに防衛局が着手しています。

 しかし、新たな基地負担は受け入れないとする沖縄県民の意思は揺らいでおらず、「安保3文書」による南西諸島の「要塞化」など沖縄が再びの戦場となることへの危機感でのたたかいとも一体で継続されています。このたたかいともかかわって、6月7日公示、16日投票でたたかわれる沖縄県議会議員選挙での「オール沖縄候補」の勝利が重要になっています。

 

(3) 大軍拡のもとで切り刻まれるくらし

 1) 2023年度予算概算要求基準では、社会保障を除く一般政策経費の1割カットが掲げられ、社会保障については高齢化等による自然増の抑制が強いられました。24年3月の国会審議で政府は「社会保障費以外の『歳出改革』で生じる財源は『防衛力強化のための財源』」と強弁しました。

 2) このような財政政策の姿勢が貫徹される結果、GDP2%、総額43兆円の軍事費確保が最優先されて聖域化される一方で、子ども子育て支援の財源を他の社会保障費削減と公的医療保険への保険料上乗せで捻出するという新たな国民負担や、訪問介護の基本報酬の引き下げなどの社会保障切り捨てにつながっています。

 3) 4月9日の財務省・財政制度審議会で、能登半島地震の被災地の復旧・復興が論議され「将来の需要減少や維持管理コストも念頭」においた復興を求める提言が行われました。復興が本格化する中、「無駄」な財政支出は避けたいとの立場を明確にしたものと言われ、被災地・被災者切り捨ての姿勢を露骨に示しました。

 日米の金利差が縮小しない中で円安が再加速していますが、その影響はアメリカからの武器購入費用にも及び、軍事費拡大の要因にもなり、国民生活へのしわ寄せがさらに強まることが懸念される情勢です。

 

(4) 大企業中心の経済政策のもとでの内需の縮小、富の偏在と格差と貧困の拡大

 1) 市民が物価高騰にあえぐ一方で輸出大企業が円安効果も受けた空前の儲けと利益をあげつづける状況は、供給サイド重視から需要サイド重視の経済政策への転換が急がれることを示しています。

 ①労働法制の規制緩和と性別役割分担意識を最大限利用した低賃金と長時間労働の押しつけという人件費カット、②消費税を「基幹税」として庶民に増税を強いる一方で富裕層や大企業を優遇する税によるコストカット、③医療・介護・年金などの制度改悪をくり返すことで社会保障費の自然増を抑制し続けてきた社会保障のコストカット、④教育費無償化の要求に背を向けて教育費を家庭に押し付けてきた教育のコストカットなど、大企業が政治に求め続けている「コストカットによる企業の儲けの確保」の仕組み改革は、くらしの安定や格差と貧困の解消の面からも、内需中心の経済に転換するためにも喫緊の課題です。

 2) 大企業は、「失われた30年」の間もコロナ禍でも内部留保を蓄積し、2023年9月時点で555兆円と日本のGDFに匹敵する規模にまで溜め込んでいます。近年大企業は、蓄積した内部留保を次の生産のための投資ではなく金融資産への投資に振り向ける割合を高めており、不要不急の蓄積となっています。

 これまでのコストカット政策や大企業優遇の施策の結果が巨額な内部留保の源泉となったことの指摘も含め、この取り崩しを迫る政治への転換が求められています。

 

(5) 矛盾が表面化するジェンダー不平等の実態と仕組み

 1) 世界経済フォーラムによる日本のジェンダーギャップ指数は、0.684で前年から0.003ポイント改善したものの順位は125位で9ランクダウンしました。このことに示されるように、ジェンダー平等をめざす世界の流れからの日本の立ち遅れは明白で、政治の責任による改善が求められる分野です。

 とりわけ、政治分野への女性の参加と男女賃金格差の是正をはじめとする経済分野での改善は急務です。

 2) 2023年4月の統一地方選挙も含め、自治体の首長選挙や議員選挙での女性進出が一定すすみ、市民連合の「フェミブリッジ」など政治の変化を迫る女性を中心とする運動も活発になっています。

 賃金格差を企業に公表させる制度、不同意性交罪の新設などの刑法改正なども行われました。また、選択的夫婦別姓を求める裁判が繰り返し提訴され、経団連会長が企業活動の側面から制度改正に賛意を示す事態となっています。

 23年9月には、トランスジェンダーの性別変更での手術要件を違憲とする判断を最高裁が示し、同性婚をめぐっても24年3月に札幌高裁が異性婚しか認めない現行法を違憲と判断しました。

 3) ジェンダー平等や多様性を尊重する個人の尊厳、人格権を実現する社会に向けた動きが国内でも加速する中で、宗教右派の影響も受けた自民党の一部から強い抵抗が示されています。世論調査で6割以上が求めている選択的夫婦別姓の導入は妨害する一方で、反対意見の多い離婚後共同親権の導入については十分な審議もなく強行しようとしていることなど、、誰が妨害者かが市民の目に見えてきています。

 この点もふまえ、一人ひとりを大切にする社会の実現に向けた政治の役割を問いただす取り組みの重要性が増しています。

 

(6) 行きづまりのもとで強まる強権政治

 1) 岸田政権になって、立憲主義をふみにじり、国会を軽視し、世論を軽視する政治がさらに激しくなりました。

 少人数の密室で議論をすすめ、閣議で決定した敵基地攻撃能力の保有や戦闘機の第三国への武器輸出などは憲法を真っ向から蹂躙しています。福島原発事故の現状や能登半島地震の状況もふまえないままに再稼働と新たな建設に進もうとする原発政策、利用率無視で押しつける健康保険証の廃止とマイナンバーカードへの切り替え、大学自治への乱暴な介入など、世論を顧みない強権政治の例は枚挙にいとまがありません。

 2) これらの強権政治の裏で、裏金問題でも顕著な政治の劣化と根元からの腐敗が進み、長期政権の驕りが蔓延していたことも見過ごすことはできません。

 マスコミ等の世論調査でも明らかなように、自民党支持層にも政権への不満が噴出し、自公政権からの転換を求める世論も高まっています。

  

Ⅲ 次の1年間の取り組みと課題

1 取り組みの基本的なかまえ

(1) 政治を変えたい、政治を変えて要求実現の展望を切り開きたいと願う人々との共同を広げ、政治を大本から変える展望をさし示す「3つの共同目標」を語り、「さよなら自民党政治」の大きなうねりを作りだす時を迎えています。

 「3つの共同目標」の意義を再確認し、政治変革の統一戦線運動づくりを担う革新懇の「三つの任務」(「要求と政治の架け橋として諸課題での共闘の前進をめざす」、「『市民と野党の共闘』の支え手として奮闘する」、「『3つの共同目標』にもとづく革新統一戦線の担い手の役割を果たす」)の取り組みを強めます。

(2) 要求運動と政治変革の運動をつなぐ「ネットワーク」づくりでの革新懇、賛同団体の役割の再確認と取り組みの具体化・活性化、「市民と野党の共闘」の再構築に重点的に取り組みます。

(3) 11月30日(土)、12月1日(日)に「地域・職場・青年革新懇全国交流集会」を京都市内(京都テルサ)で開催します。

 適宜の時期に、都道府県事務室(局)長会議や賛同団体代表者会議を開催します。

 ブロック別「交流会」(オンラインを含む)の開催を検討します。

 情勢と課題をふまえた講演会、シンポジウム、つどいを開催し、見解などの適宜の公表に努めます。

 

2 「さよなら自民党政治」の大運動

(1) 自民党政治の行きづまりのもとで、政治を大本から変える取り組みとして「さよなら自民党政治」の大運動に革新懇の総力を挙げて取り組みます。

「3つの共同目標」の実現をめざす革新懇運動の原点を改めて確認し、「3つの共同目標」を支持する勢力の躍進と「市民と野党の共闘」の再構築の取り組みを強めます。

(2) 当面、次の1年間で自民党政治が各団体の諸要求実現の障害となっていることを明らかにし、変わる政治実現の展望を訴えるシンポジウム、講演会などを全国の複数個所で開催します。

 志賀原発の状況、能登半島地震被害での避難困難さなどもふまえた「再稼働の危険性」を告発する「シンポジウム」の開催をめざします。

 

3 国政選挙での取り組み

(1) 「戦争する国づくり」への暴走を食い止めるため、「市民と野党の共闘」の再構築を追求し、悪政推進の改憲翼賛体制を阻止するために奮闘します。

(2) 選挙区割りの変更もふまえた小選挙区単位での「市民連合」結成、再編をめざし、その活動を支える共闘の一翼を担って奮闘します。

 参議院1人区での「市民と野党の共闘」の実現に尽力します。

(3) 市民と野党の統一候補が実現した選挙区ではその候補者の勝利をめざします。

同時に、「3つの共同目標」を支持する政治勢力の躍進にむけ、比例選挙での革新懇としての取り組みを探求します。

(4) 地方自治体の首長選挙での「市民と野党の共闘」前進の経験にも学び、都道府県革新懇、地域革新懇とともに首長選挙での野党共闘の実現に挑戦し、統一戦線運動を地域、草の根から広げます。

 

4 革新懇の要求とめざす社会

(1) 憲法をまもり、いかす立憲主義を取り戻し、自由と人権、民主主義の発展を求めます。

大軍拡・大増税に反対し、くらし重視の政策への転換を求めます。

安保法制(戦争法)、秘密保護法、共謀罪、土地利用規制法などの憲法違反の法律の廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定、「安保3文書」の撤回を求めます。

 「裏金」問題の全容解明、「森友問題」「加計問題」「桜を見る会」の問題など一連の国政私物化疑惑の徹底的究明、内閣人事局の廃止、日本学術会議の任命拒否の撤回と日本学術会議法改悪に反対し、強権政治からの転換をめざします。

 憲法9条改憲を阻止し、改憲発議につながる一切の動きに反対します。

(2) 国連憲章、国際法に反するロシアの侵略戦争の中止、ウクライナからの即時撤退を求めます。イスラエルのガザからの即時撤退、ハマスの人質無条件解放、戦争の拡大に反対します。

 国連憲章と憲法にもとづく平和秩序の構築、包摂的な東アジアの平和協力の枠組みづくりを追求します。

(3) 対米従属の軍事同盟から抜け出し、自主・自立の平和外交への転換を求めます。米軍と自衛隊の軍事的「融合」に反対します。

 沖縄県民の民意に背く辺野古新基地建設の中止、普天間基地の無条件返還を求め、馬毛島への基地建設、南西諸島などへのミサイル配備、「軍事要塞化」に反対します。

日米地位協定の抜本的改正を要求します。米軍への「思いやり予算」の中止、高額で他国攻撃可能な武器の「爆買い」に反対します。

 核兵器禁止条約の早急な署名・批准を求めます。

 新自由主義から転換を求め、くらしをまもる政治をめざします。

 政府の責任による医療・介護・障害者福祉・保育などケアワークの人びとの待遇改善を求めます。社会保障削減・抑制に反対し、拡充への抜本的な転換をめざします。「マイナンバー健康保険証」の強制、健康保険証廃止に反対します。

 8時間働けばくらせる人間らしい雇用のルールの整備を求めます。労働法制の規制緩和路線からの転換、最低賃金を全国一律・時給1500円以上への引き上げを求めます。

 地方経済の立て直しの柱に中小企業と農林水産業の振興を位置づけるよう求めます。

 中小企業「淘汰(とうた)」の政策、歯止めなき自由化路線を見直し、農業への所得・価格保障の拡充、食料自給率の目標明確化、食糧危機を克服する農政への転換を求めます。

 大学等の学費負担の軽減と給付制奨学金の大幅な拡充、高校までの少人数学級の速やかな実現、授業料負担免除など教育費の負担軽減を求めます。

 教職員の長時間労働の抜本的な是正を求めます。

 小中学校での学校給食の完全実施、給食費無償化の即時実現を求めます。

 消費税の5%への減税、インボイス制度の廃止を求めます。コロナ禍でも資産を増やした富裕層、大企業に応分の負担を求める税制改革、大企業の内部留保への課税を求めます。

 被災者生活再建支援法の抜本改正、能登地震被災地の住民本位の復興を求めます。

 原発の再稼働、新増設に反対し、原発に依存しない脱炭素社会の実現を求めます。

 地球規模の環境破壊を止めるため、大型石炭火力の建設計画の中止、既存施設の計画的停止・廃止、再生可能エネルギーへの転換によるカーボンゼロ社会の実現を求めます。

 福島第一原発の汚染処理水の海洋放出に反対し、原発被災者への支援強化を改めて要求します。

 地震大国、災害大国の日本にふさわしい災害対策、被災者支援体制等の整備を求めます。

 

(6) ジェンダー平等社会の実現、女性の権利の国際基準への引き上げ、多様性を大切にし、個人の尊厳を尊重する社会を求めます。

雇用の場における男女差別の撤廃、選択的夫婦別姓制度の実現、同性婚の法的整備、LGBTQ差別禁止法の制定を要求します。

あらゆる政策・意思決定の場におけるジェンダー平等を求め、政治分野における男女共同参画法(パリテ法)の実効性ある改善を求めます。

 

(7) 外国人労働者への差別をなくし、労働者としての権利保障を求めるとともに、外国人入国者の人権保護を徹底させ、出入国管理の人道的改善をめざします。「入管法」の改悪に反対します。外国人実習制度の廃止を求めます。

 

 

Ⅳ 運動を支える革新懇づくり

1 「市民と野党の共闘」の取り組みからも明らかな革新懇の重要性

 「市民と野党の共闘」の強化・発展に危機感をもった支配勢力などからの分断攻撃が強まり困難な局面も生まれています。そのせめぎあいのなかで、「確固とした展望をもった統一戦線運動の推進力」である革新懇の役割が重要になっています。

 その点を再確認し、「革新懇づくり」の取り組みを進めます。

 

2 「三つの任務」を再確認して「三つの力」の発揮を

「三つの任務」の実践に力を寄せ合います。

「三つの任務」を果たす革新懇運動の「三つの力(政策の力、組織の力、草の根の力)」の発揮をあらためてよびかけます。

「三つの力」を十全に発揮するためにも、運動に参加する人々をリスペクトし、ハラスメントのない革新懇づくりをめざします。

 

3 革新懇運動における賛同団体の役割

(1) 革新懇は、全労連、新婦人、全商連、民医連、農民連、民青同盟など賛同団体と日本共産党、都道府県革新懇、地域・職場・青年革新懇、そして個人会員のそれぞれの運動が力を発揮し、総体の力を高め、運動を前進させてきました。

 そのことをもふまえ、賛同団体には以下の役割を期待します。

① それぞれの団体が大きくなり、各分野で影響力を高め、統一戦線運動の発展に貢献します。各分野で要求の一致点での共同をひろげるとともに、それぞれの領域で新しい社会実現に向けた政策を提起し、その実現のためにも国政革新をめざす共闘、統一戦線運動の必要性を訴えます。

 ② 革新懇運動の意義を各団体のなかにひろげ、革新懇ニュースも活用した「要求と政治を語る場」を意図的に作り出すとともに、地域などの革新懇運動や事務室(局)体制を支え、地域革新懇の結成にかかわるなど、革新懇づくりで積極的な役割を発揮します。

 

4 都道府県革新懇の取り組みと態勢の強化

(1) 現在、47都道府県革新懇とそれに結集する地域革新懇は自治体数比36%で、衆院の小選挙区にも対応する組織状況にはなっていません。「市民と野党の共闘」を各地域で支え、統一戦線運動を地域に根付かせていくため、進んだ都道府県、地域の経験に学び、交流を深め職場や地域に密着した革新懇づくりに挑戦します。

 未結成の地域や休止状態の地域革新懇を把握し、新結成や準備会発足、活動再開の可能性を追求するため、次の取り組みをよびかけます。

  • 地域・職場・青年革新懇づくりの目標を持ちます。
  • 「全国革新懇ニュース」普及について議論し、目標と計画をつくります。

 ③ 各地で地域・職場・青年革新懇、賛同団体の交流会・学習会を計画します。

(2) 都道府県革新懇は、都道府県内の地方政治分析や選挙闘争への参画、各分野の運動全体を視野に入れた活動をすすめます。

① 革新懇の役割を探求する運動交流会・シンポ、地域・職場・青年革新懇の活動交流、賛同団体、市民運動との懇談会などを開催します。

② 「団体、政党、個人」が結集する革新懇の力が発揮できるように代表世話人会の充実、事務室(局)体制の拡充と事務室(局)長の専任化を追求します。世話人などの役員、事務室(局)員などに女性や現役世代、若者が参加し、多彩な構成となるよう努めます。

③ ジェンダー平等、気候危機打開など次世代の切実な要求に応え、若い世代に魅力ある革新懇運動を追求します。

④ 身近なニュースを伝える「都道府県革新懇ニュース」は、対話と共同、革新懇運動への理解をひろげるうえでも、大きな役割を果たしています。体制を確立してニュース発行に取り組みます。

 

(3) 困難を抱える革新懇の事務室(局)体制整備、強化を全国革新懇としても位置付け、問題解決への支援を強めます。

 

5 地域に「網の目」の革新懇を、すべての自治体・行政区さらに校区に革新懇を

(1) 革新懇を各地に「網の目」でつくることは、自公政治を転換し、野党連合政権をつくり、地方自治を前進させる組織的な土台です。「地域の草の根運動の主役」と位置づける地域革新懇の結成・維持・強化を重視します。

(2) 地域には営業、医療・介護、教育、子育て、交通、住宅、環境など多岐にわたる分野で、切実な要求の実現を求める住民の声が渦巻き、運動が生まれ、政治を変える力が蓄積されています。この点に目を向けた取り組みを強めます。

  • 地域要求と国政課題を2つの柱にしてとりくみます。
  • 一つひとつの企画で新しい結びつきを探求します。
  • 多様な共同行動、共同組織との協力・連携をめざし、すべての自治体・行政区さらには校区単位での地域革新懇の結成を引き続き追求します。

 当面、小選挙区単位の革新懇(革新懇連絡会)の結成、整備を進めます。

 

6 職場革新懇運動の再活性化をめざして

(1) 職場革新懇は、労働組合の違いをこえ、非組合員も管理職も、正規も非正規も、現職も退職者も誰でも参加できることを特徴に結成を進めてきました。

どこの職場でも厳しさが増し、政治的な論議が難しくなっている現状を打開していく上で「職場に政治の風を吹かせる」職場革新懇の役割を再評価する時期にきています。

(2) 継続的な取り組みをおこなっている職場革新懇の経験に学び、退職者が中心で消滅するところも少なくない職場革新懇の現状の前向きな打開に努力します。

(3) 現役労働者にどう接近するかを含め、賛同団体とも連携しながら職場革新懇運動のあり方について論議を進めます。職場革新懇の現状についての実態調査もふまえ、「職場革新懇あり方検討委員会(仮称)」の開催を検討します。

 

7 すべての都道府県で青年革新懇の結成を

(1) 青年の働き方やくらしの現状を話し合う中で青年革新懇の結成につながり、独自の取り組みを行うことで活動を継続している教訓を広げ、活かす努力を強めます。

(2) 活動を継続・発展させるために、定例会議の重視と「全国革新懇ニュース」の配達・集金、仲間を増やすこと、青年の要求にかみ合った企画を持つことなど、青年の自主性を尊重した運営上の工夫を大切にします。

(3) 都道府県革新懇や地域革新懇での支援の強化、賛同団体の協力も得て、すべての都道府県で青年革新懇の結成を目指します。

 

8 革新懇づくりの「核」、「全国革新懇ニュース」の拡大、発信力の強化に向けて

 「全国革新懇ニュース」の普及について、早期の3万部回復を達成し、5万部の峰へと本格的に挑戦します。

 読者の減少を止め、増紙の目標を確立して取り組みを進めます。会議の未開催、配達・集金の乱れなど活動の停滞を解消し、組織的な拡大運動と財政基盤の確立を呼びかけます。

 ニュースの拡大への賛同団体の協力を呼びかけます。

 増紙(拡大)と、革新懇(困難県での体制確立、職場・青年革新懇、地域革新懇)づくりを一体で進めます。要求課題での取り組み(講演会、学習会、シンポジウムなど)を具体化し、つながりを広げてニュース拡大につなげます。

 都道府県革新懇と連携し、代表世話人などによる講演会の全国的な開催を検討します。

 全国革新懇として、SNSの活用など「発信力」強化につとめます。

 全国革新懇ニュースの魅力向上に努めます。

 

おわりに

(1) 衆議院東京15区補選をたたかった江東市民連合の4月29日付の共同代表談話は、補選勝利の意義を次のように述べています。「自公の強い保守反共地盤のもとで、市民と野党の共闘で勝利したことは、自民党政治を変えたいと願う有権者の変化を示すものであり、自民党政治の政権交代に向けた新たなスタートになるものです」と。

 2021年総選挙前後の反共攻撃をともなう野党共闘への分断攻撃は、1980年社公合意当時の状況を彷彿させるものでした。マスコミを総動員し、野党や労働運動のナショナルセンターが共産党排除を声高に唱え、野党第一党を揺さぶり続けました。

 その状況が和らいだ訳ではありませんが、1980年代とは異なり、市民運動が様々な分野で力を蓄え、影響力を高めてきたことが、共産党排除の動きを乗り越えて「市民と野党の共闘」を継続・発展させる力になりました。

(2) 紆余曲折はありながらも、過去のいきさつを横に置いた護憲勢力の共闘組織・「総がかり行動実行委員会」は、軍拡・増税反対、改憲発議阻止のたたかいを軸に共闘を積み重ね、2024年5月3日には10回目となる憲法大集会を3万2千人の参加で成功させました。

 気候危機問題が深刻化するもとで、若者を中心に地球温暖化ガス排出ゼロをめざす様々な行動が具体化されました。

 個人の尊厳と多様性の尊重を求める取り組みでは30年目の取り組みとなった「東京レインボープライド2024」には延べ27万6千人が参加し、多様な性を祝福しあいました。各マスコミの世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成が多数を占め、共同通信社の世論調査(2024年5月)では76% が賛成と回答しています。

(3) 個々人の意識は確実に変化しているにもかかわらず、制度、政策は旧態依然の状態です。その乖離は年々大きくなり、矛盾が拡大し、政治の変化を求める市民の要求が高まり、市民運動が飛躍的に発展する条件は高まっています。

 その条件を真正面から見すえ、各分野の切実な要求を政治の変化、政権交代の運動につなげるために、革新懇の知恵と力を寄せあいましょう。

 「三つの任務」を担える革新懇づくりに奮闘しましょう。

以 上

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