地域・職場・青年革新懇全国交流会 in東京 問題提起

2022年11月19日

全国革新懇代表世話人会

はじめに

(1) 全国革新懇は、第41回総会(2022年5月)を872革新懇(地域革新懇703、職場革新懇142、青年革新懇27)、47都道府県革新懇、20革新懇準備会の計939革新懇で迎えました。結成から41年目に入り、高齢化等の影響から休止・休眠中の革新懇もありますが、一方で総会後の短期間でも1県・2地域革新懇が活動を再開するという動きもあります。「市民と野党の共闘」を地域から支える革新懇運動の役割への理解が広がっていることが反映している動きです。

(2) 新型コロナウィルス感染拡大や2021年10月の総選挙の影響もあって、3年ぶりの開催となる今回の「地域・職場・青年革新懇全国交流会」は、①2021年総選挙、2022年参議院選挙などでの「市民と野党の共闘」の状況、前進的な面と停滞、交代が混在する共闘の現状にも留意しつつ、いきづまりが顕著な自公政治に変わる政治を「市民と野党の共闘」の力で実現するための革新懇の役割と運動を交流し、論議し、新たな前進を探求する場とすること、②各地での「革新懇づくり」の経験を交流し、共闘を継続的に支え、「三つの力(政策の力、組織の力、草の根の力)」を発揮する組織としての革新懇への飛躍をめざす決意を固め合う場とすること、③参議院選挙後の激動する情勢もふまえ、直面する個別課題での共闘を前進させて「市民と野党の共闘」につなぐ全国的な取り組みについて議論し、確認する場とすること、の3点を目的に開催します。

 

1.「市民と野党の共闘」の到達点と今、革新懇が全国で果たしている役割

(1) 「市民と野党の共闘」の若干の経緯(2022年参議院選挙まで)

① 1960年代後半から70年代にかけて革新自治体が全国に広がり、革新統一戦線の結成も課題として浮上する状況に危機感を持った自民党、支配層は反共攻撃を強めるとともに政治、運動の場での再編をしかけ、「日本共産党を除く」状況が国政のみならず、地方政治や大衆団体の場でも強められました。1981年1月の「社公合意」や1989年の労働戦線再編がその象徴的な事柄です。

 この攻撃に対抗し、要求の一致点での様々な分野の人々との共闘を前進させ、「3つの共同目標(生活向上、民主主義、平和)」を実現する政治をめざした統一戦線運動を追求する「革新懇運動」が開始され、賛同する個人、中央団体、都道府県革新懇によって構成する全国革新懇を1981年5月に結成しました。

② 全国革新懇は、小選挙区制導入反対、消費税導入反対や、PKO法などの有事法制反対、憲法改悪阻止の取り組みなどとともに、環境問題や沖縄での新基地建設反対のたたかい、農業問題など暮らしや地域問題を全国課題として取り上げ、地域、職場の切実な要求をかかげ、要求の一致点での共同の取り組みを前進させ続けました。

 2004年の「九条の会」の結成と2011年の東京電力福島原発事故後の「原発ゼロ」をめざす市民運動、「路上民主主義」とも言われる市民運動の高揚が革新懇運動の画期となりました。さらに、2014年沖縄県知事選挙で、保守・革新懇の「垣根」をこえ、「建白書(辺野古新基地建設反対など3点)」の一致点での「オール沖縄」の候補が勝利したことも革新懇運動を励ましました。

③ 2014年7月の集団的自衛権容認の閣議決定と、翌2015年通常国会での安保法制(戦争法)強行成立への危機感を共有して、安保法制廃止と立憲主義回復をめざす市民運動が全国に広がり、政治の転換をめざす野党共闘を求める声が高まりました。

 この市民の声に応えた野党が、2016年参議院選挙一人区での候補者調整を行い11選挙区で自公候補者に勝利しました。要求・政策の一致点で政治の転換をめざす「共闘の時代」のはじまりでした。

 翌2017年10月の総選挙では「希望の党」の結成という逆流の中で「市民と野党の共闘」を守り抜き、2019年参議院選挙でのたたかいを経て、2021年総選挙を前に立憲民主党と日本共産党が「政権協力」に合意し、市民連合と野党4党(立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組)との「政策合意」を実現する「政権」を「市民と野党の共闘」でめざすところまで前進しました。

④ この状況に危機感を強めた自民党、支配層が共闘分断の意図で再び持ち出したのが反共攻撃でした。「共産党の力を借りて立憲民主党が政権を握れば日米同盟の信頼関係は失われてしまう」(2021年10月21日・安倍元首相)との発言は攻撃の狙いを端的に示しています。また、連合会長がその共闘分断の攻撃に表立って加担しました。

 総選挙後も共闘分断攻撃、反共攻撃が強まる中、2021年2月にロシアが開始したウクライナ侵略も契機に、国内では「武力による抑止力強化論」が一気に強まり、敵基地攻撃能力保有論議や9条改憲論が勢いを増しました。この状況のもと、「安保法制廃止」という「市民と野党の共闘」の一丁目一番地の課題での合意がゆらぎ、2022年参議院選挙での共闘選挙区が12にとどまるなどの後退が生じました。

 

(2) 「市民と野党の共闘」ではたしてきた革新懇の役割

① 共闘の直接の当事者である日本共産党はもとより、全労連、民医連、新婦人、全商連、農民連、民青同盟などの賛同団体も「総がかり行動実行委員会」や「市民連合」の運動、取り組みへの積極的なかかわりを強めることで「市民と野党の共闘」の前進、発展を支えてきました。

 都道府県、地域革新懇でも、宮城県・多賀城、千葉、東京、山梨、滋賀県・長浜、奈良、広島などの革新懇が市民連合の結成、活動に積極的にかかわり、長野、岩手や山形県・置賜などでは野党統一の候補や統一候補として当選した議員との懇談会を積み重ね、福島、滋賀、兵庫などでは各野党、統一候補との政策意見交換会などが行われています。

 また、愛知県・みなと、兵庫県・川西、香川、高知革新懇などでは、候補者を招いた学習会などが行われ、北海道、新潟、宮崎革新懇などでは、政党、議員、候補者とともに街頭宣伝を積み重ねています。

 さらに東京では、都知事選挙をたたかう中で、都内の25小選挙区すべてで立憲民主党、日本共産党両党の合同選対をつくり、その内の18選挙区では「市民と野党の共闘」型選対として活動する段階にまで前進しました。

② 政治の転換を目指す共闘を支え、前進させるうえでも、各革新懇が日常的に個別課題の共闘に積極的にかかわり、認知度を高めてきたことが反映しています。

 前回集会(2019年10月)以降でも、コロナ対策拡充や学術会議会員任命拒否撤回、検察庁法改悪阻止などの課題で、各地の革新懇が学習会、街宣署名、要請行動などを呼びかけて運動と共同を広げてきました。

 コロナ危機に際して、市長との懇談・要請をおこなって県内最速で10万円給付開始させた山形・西置賜革新懇、「公立病院縮小やめよ」の共闘を前進させた東京・えどがわ、さいたま市北区革新懇、「中小業者の営業守る支援を」と訴えた千葉・船橋革新懇、「コロナ禍での教育環境改善を」と取り組みを広げた大阪・藤井寺、佐賀・唐津革新懇など全国各地の革新懇が奮闘しました。「緊急小口資金申請相談会」(新潟・あすの大江山を考える会)、「年越し街頭無料相談会」(兵庫・姫路革新懇)、「若者・学生への食料支援応援」(さいたま南区革新懇)など市民に寄りそった運動でも奮闘しました。

③ 「IRカジノ反対」(横浜連絡会)、「水道料金値上げ反対」(埼玉・川口革新懇)、「戦争美化教科書不採択を」(東京・東久留米革新懇)、「国保引下げ実現」(香川・三豊革新懇)など住民要求での共闘づくでも大きな役割を発揮しました。

 大阪市解体阻止「住民投票」での勝利(大阪革新懇)、河井疑惑をただす会(ヒロシマ革新懇)、不正リコール署名問題追及と名古屋市長選(革新・愛知の会)など、政治変革の取り組みが行われています。

 継続したスタンディング行動を地域革新懇が呼びかけ、「行動200回を突破」(神戸市・中央区革新懇、川崎市・中原革新懇)、「ゲンパツいややん行動10年・390回」(大阪・寝屋川革新懇)、「100回目の宣伝行動」(佐賀・神埼・吉野ヶ里革新懇)など、改憲阻止、「アベ・スガ政治許さない」、原発ゼロ、沖縄新基地建設やめよ、などと訴え続けてきました。

これらの取り組みが「市民と野党の共闘」を支える基礎的な力になっています。

 

2.参議院選挙結果の厳しさと潮目の変化

(1) 2022年参議院選挙後の情勢と「市民と野党の共闘」

① 共闘が揺らいだ2022年参議院選挙の結果、自民、公明の与党が引き続き過半数を維持し、改憲を主張する勢力が衆議院、参議院ともに3分の2議席をこえる国会状況となりました。

 この結果を受けて岸田首相は、7月12日の記者会見で「ロシアのウクライナ侵略で終わりを告げた『ポスト冷戦時代の次の時代』にふさわしい新しい国際秩序」をめざし、「日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化」、「同盟国との連携強化」を打ち出すとともに、「敵基地攻撃能力」の保有を中心目的に「年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定」し「防衛力を5年以内に抜本的に強化」し、「改憲の早期実現にむけ、自衛隊の明記など4項目の実現に論議をリード」すると述べるなど、いわゆる「黄金の3年間」を手に入れた高揚感を隠しませんでした。

② 参議院選挙期間中の2022年7月8日に、安倍元首相が銃撃されるという、あってはならない事件がおきました。岸田首相が、この事件を政治的に利用する「国葬」実施をまともな議論もなしに決定したことで情勢が大きく動きました。

 特定の個人の葬儀を国が行い国民全体の弔意を強制することの違憲性への疑問や、銃撃事件を契機に表面化した世界平和統一家庭連合(統一協会)と政治、とりわけ安倍元首相など自民党議員との根深い癒着関係への市民の怒りが、説明責任等を果たさない岸田政権への批判となって高まり、内閣支持率が急落しました。

 野党の臨時国会開催要求にも応えずに「国葬」を強行したこと、統一協会との深い関係が指摘される閣僚を任命したこと、物価急騰に対する対応の鈍さと大企業・富裕層重視の経済政策の継続など岸田政権の政策全体を市民が批判し、内閣支持率が落ち続けています。「潮目が変わった」と言われる世論の変化がおきています。

③ そのような世論状況にあるにもかかわらず、岸田政権は安倍政権以来の大軍拡と改憲、新自由主義の経済政策を強引に進めています。

 衆議院、参議院共に自公が過半数を維持し、内閣支持率は低下しても、政党支持率は大きく変化せず、野党への期待も高まらない世論状況がその背景の一つです。

 アメリカの軍事戦略に追従して集団的自衛権を行使する軍事訓練や中国包囲を目的とする多国間の軍事連携を強め、他国攻撃可能な武器装備保有を可能にする国家安全保障戦略等の改定を密室論議で進め、5年間で軍事費を対GDP比2%以上に引き上げる大軍拡を強行しようとしています。

 先進諸国が金融引き締めに転換するもとでなお「異次元の金融緩和」に固執して急激な円安を招き輸入品の価格が上がり続けているにもかかわらず、有効な対策を取ろうとしていません。

④ デジタル化を口実に健康保険証を廃止してマイナンバーカード取得を義務付ける個人情報管理一元管理、監視社会にむけた施策を突然決定し、ロシアのウクライナ侵略によるエネルギー価格の高騰を口実に休止中の原発再稼働のみならず新規の原子炉建設論議を開始するという「福島原発事故」をなかったものとする動きも強めています。

 財源も示さない大軍拡ありきの論議の一方で、年金保険料負担年齢の引き上げや介護保険料の引き上げ、消費税率引き上げなど社会保障の給付削減と負担増を市民に迫ろうとしています。

⑤ 政治が平和とくらしを壊し、尊厳ある生活を困難にする安倍政権以来の状況が継続、強化されており、政治を変えなければ切実な要求が実現しない状況はより強まっています。

 この点で、参議院選挙での争点でもあった「大軍拡の政治か、くらし・社会保障・教育などへの配分重視の政治か」、「憲法9条改憲の政治か、9条をいかした政治か」、「経済重視の政治かジェンダー平等など個人の尊厳実現の政治か」などの点でのせめぎあいはいっそう強まっていると言えます。

⑥ 政策をめぐるせめぎあいが強まる情勢にもかかわらず、自公政治に変わる新しい政治の姿が市民には見えていません。市民参加で政治を変える「市民と野党の共闘」の姿が伝わっていないことや、野党の共闘への姿勢にゆれがあることが影響しています。

 立憲民主党は、国会内での共闘について「憲法にもとづく開会要求があった場合20日以内の国会召集を義務付ける国会法改正法案」など6項目の協力合意を日本維新の会と結ぶ一方で、「臨時国会を統一協会問題追及国会とする」ことなど3項目の国対委員長確認を日本共産党と行っています。また、市民連合との間で「防衛費のGDP比2%拡大、敵基地攻撃能力保有などに反対」、「一方的な改憲策動強行に反対すること」などの12項目の政策要望を受け取っていますが、連合との政策協議も同時に継続しています。政治の転換を「市民と野党の共闘」でめざすという明確な態度をとってはいません。

 さらに、泉代表が「憲法改正での立憲と維新の異なりは『差があってないようなもの』」と発言するなどの揺れも出ています。

⑦ 潮目が変化した政治情勢のもとで、「市民と野党の共闘」の前進をめざす取り組みが始まっています。市民連合は、臨時国会での政策要望を野党(立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組)に行い、共闘した取り組みを10月中旬に求めました。

 各地でも、奈良1区市民連合が共闘の継続強化を確認し、市民連合@みやぎが共闘再強化をめざす集会を開催し、市民連合「ちょこみな」@東京22区が野党トークライブを開催するなど、参議院選挙結果をのりこえて「市民と野党の共闘」を前進、発展させる動きが始まっています。

⑧ これらの取り組みを後押ししているのが、「国葬」反対のたたかいと世論の広がりをはじめとする様々な分野での市民運動の高まりです。

 自発的な取り組みも含め「国葬」決定の撤回、中止をもとめるオンライン署名が4種類取り組まれ、短期間で40万筆をこえて集約されて世論を可視化しました。閣議決定直後からデモやスタンディングなどが繰り返し行われ、実行委員会形式でよびかけられた9月27日当日には、全国147か所、26,981人以上が集会、行動に参加し、抗議の意思を示しました。

 消費税減税・インボイス中止を求めるフリーランス・事業者のたたかいが草の根で広がっています。健康保険証の廃止とマイナンバーカード「義務化」の動きに対し署名をはじめネットでの批判が一気に燃え上がりました。11月3日には憲法を守り、いかすことを求めて全国各地で憲法大行動が展開されました。

 このような市民の立ち上がりと、国会内での政権追及が世論をさらに動かし、今後のたたかいへの確信が共有されはじめていいます。

 

3.「大軍拡、改憲よりくらし重視を」の取り組みをつよめて「市民と野党の共闘」の前進、強化を

(1) 困難さを増す市民のくらし

① 1990年代以降、日本経済が成長しないもとで、平均賃金はOECD諸国で唯一低下し、年金支給や生活保護費も切り下げられるなど、所得が減り続けています。一方で、消費税増税などもあって公的負担(税・社会保障費)は増え続け、可処分所得が低下してきました。雇用もパート、アルバイトなど不安定な非正規雇用労働者が増加しました。少子化が急速に進む中で、女性と高齢者、さらには外国人労働者を安価な労働力とする状況も強まってきました。

 このような雇用等の状況に、新型コロナウィルス感染が拡大して経済活動に冷水を浴びせ、その影響が残る中で急激な円安などを要因とする物価の急騰がくらしを直撃しているのが今です。円安も要因とする資材、エネルギー価格の高騰が、業者、農民の生業を直撃し、高齢化や後継者難の困難に追い打ちをかけています。

 子どもの貧困が深刻化していることは子ども食堂の取り組みが高止まりしていることからも伺えます。

 あらゆる分野で個人の責任では対処できない困難が広がっており、公共の役割、政治の役割が強く問われる局面です。

② その時に自公政権は、大軍拡に舵を切り、富の再配分政策を緩めて企業の経済活動重視の新自由主義政策を継続強化し、市民の困難に追い打ちをかけています。

 内閣府の「国民生活に関する世論調査」の各年別の推移をみると、2010年代に右肩上がりし続けていた「(去年に比べた生活の向上感は)同じようなものと」という回答が、2020年には10ポイントも低下しています。コロナ禍でのくらしの変化が影響しており、岸田政権の経済政策への批判の強さにも反映しています。市民の意識にも変化がおきており、それを政治の変化を求める世論につなげる条件の一つがここにあることは、岸田政権が示した総合経済対策への世論の評価(どちらかといえばをふくめ「期待しない」が71%、10月30日共同通信)からも明らかです。

③ ロシアのウクライナ侵略の影響や中国脅威論の大キャンペーンなどのもとで、「防衛費増額に賛成が55%(10月12日、NHK)」や「敵基地攻撃能力保有に賛成が53.5%(10月9日、共同通信)」などに表れる厳しい世論があることは事実です。

 その世論に働きかけるうえでも、敵基地攻撃能力保有が専守防衛というこれまでの政府の憲法解釈さえふみにじる違憲の行為であり、日本を戦場にする危険極まりないものであること、その保有のために社会保障費や教育予算などがしわ寄せされ、くらしがさらに困難になることを訴え、「軍拡かくらしか」の税金の使い方での市民の選択が問われる課題であることを伝え、大軍拡反対の世論を大きして政治の選択につなげていく取り組みが求められる情勢です。

 

 

(2) 憲法をないがしろにし続けた自民党長期政権による社会のゆがみの是正をせまる運動の重要性

 統一協会問題に再び焦点が当たり、カルト集団と反共集団の二つの顔を持つ統一協会が政治権力に深く食い込でいること、とりわけ自民党政治家と癒着の深刻さがあらわになりました。2005年の男女共同参画・第2次基本計画策定の際に統一協会が、「ジェンダーという文言を使用させない」との立場で安倍晋三氏等に働きかけを行っていたことを示す文書なども明らかになっています。

 1970年代後半から強まった日本型福祉国家論のもとで強められた性別役割分業論の是正を求める取り組みを妨害し、ジェンダー平等をめざす世界的な人権思想前進の流れに逆行する動きが日本国内で起きた背景に、カルト集団と政治との癒着の構図がうかがえるものです。

 自民党政治の体質的な問題が統一協会問題で表面化している今、個人の尊厳の実現を最大目的とする立憲主義の履行、憲法にもとづく政治への転換を、ジェンダー平等社会の実現や同一労働同一賃金の実現、政治の場への女性参加の促進、選択的夫婦別姓の導入、ハラスメントの根絶などの課題での運動を前進させつつ、政治の転換を目指す共闘につなげていくことが求められています。

 

(3) 個別要求での共闘を新しい政治をめざす共闘、「市民と野党の共闘」につないで

① 岸田政権の発足から1年を経過し、この政権が経済政策でも外交・安全保障の面でも「安倍政治」を丸ごと引き継いでいることが明らかになりました。くらしよりも経済、安全保障と言えば軍事という政治は、食糧自給率、エネルギー自給率の低下が市民のくらしの「安全」を脅かす要因となっていることも表面化しました。統一協会との関係をただそうともせず、癒着温存の姿勢を示しています。このまま岸田政権が続くのでは、暮らしはさらに困難になり、平和の危機が深まります。

② くらしの困難を克服するには、異次元の金融緩和政策からの転換をはじめとする実効性ある物価高騰対策や、最低賃金1500円への引き上げを柱とする賃金引上げの政策実施、社会保障と教育の負担軽減も含めた低所得者への支援策、性別賃金格差の是正などジェンダー平等実現の取り組み強化など、市民連合が10月11日におこなった野党要望書の実現を迫る取り組みを地域・草の根から再び強めていく必要があります。

 「要望書の実現に野党は共闘」の声を地域・草の根から大きくし「市民と野党の共闘」を再び強めていく必要があります。

 岸田政権を世論が追いつめている今、政治を変えたいという市民の声を集め、内閣打倒のたたかいと「市民と野党の共闘」再強化の取り組みをつなぎ、統一戦線運動への展望を切り開きます。

 

(4) 3つの共同目標を支持する勢力の前進は「市民と野党の共闘」を強くする要の課題

① 「日米安保条約をなくす」を含む「3つの共同目標」は、戦争法廃止、立憲主義の回復を一致点にする「市民と野党の共闘」の目標とはなりません。しかし、アメリカ言いなりで集団的自衛権行使容認や敵基地攻撃能力の保有などの「壊憲」をくり返す自公政治と対決するには、その大義を共有する勢力が大きな議会勢力となり、「市民と野党の共闘」の中核で奮闘することが必要です。

 新自由主義と決別し、くらし、生業重視の政策を実現していくためには、大企業の横暴と闘う姿勢を明確に示す政治勢力の伸長が欠かせません。

② 全国革新懇は、先の参議院選挙にむけ、当面の要求として、「憲法をまもり、いかして立憲主義を回復し、自由と人権、民主主義の発展」や、「国連憲章、国際法などに反するロシアの侵略戦争の即時中止、ウクライナからの撤退」などを政治に求め、「コロナ危機の克服のためにも新自由主義から転換させ、いのちとくらしをまもる政治の実現」や「ジェンダー平等社会の実現を図り、多様性を大切にし、個人の尊厳を尊重する社会」をめざすことを確認しています。

 これらの要求課題は、市民本位の政治、社会の実現をめざすと同時に、自公政治に対抗する軸となるものです。この要求実現のためにも「3つの共同目標」を支持し、「市民と野党の共闘」を発展させて政治の転換をめざす勢力の政治的影響力拡大の重要性を確認します。

 

4.三つの任務を実践できる革新懇づくり

(1) 前回交流会(2019年10月)以降の革新懇づくりの状況

 前回交流会以降に新たに結成された地域革新懇は、神奈川県・川崎市幸区革新懇、藤沢革新懇、滋賀県・高島革新懇、香川県・高松市南部地域革新懇、千葉市・中央区革新懇、東京・福生革新懇、福島・だて革新懇の7革新懇です。

 職場革新懇は、神戸のよりよい保育をめざす会(保育革新懇)が立ち上げられました。

 青年革新懇では、青年革新懇チームアンカー(兵庫県神戸市)、香川県高松市・山田青年革新懇(山田地域)が結成されました。

 革新懇準備会としては、千葉県大網白里市、名古屋市昭和区、東京都福生市、大阪府・交野市青年革新懇、岐阜・飛騨青年革新懇準備会が発足し、交野市青年革新懇は2022年11月20日に結成総会が予定されています。

 また、茨城県革新懇が再建され、長崎県革新懇の再結成も行われました。

 革新懇の役割を「共闘の時代」の今風に確認し、丁寧な論議を積み重ねることが、結成や再建につながっています。

 

(2) 各革新懇の特徴的な取り組み

 大阪損保革新懇では定期的なニュースの発行と配布で職場の仲間に革新懇運動を伝え、信頼を高めています。東京・西武革新懇は、23年間の活動のあゆみをまとめたスライドを作成しました。大阪・憲法を行政に生かす財務の会は、「森友問題を終わらすことはできない」とのビラ配布し、みえ教職員懇話会は「県教育委による自衛隊員募集」に抗議し、中止の要請と交渉をおこなうなど、時々の情勢に応じた取り組みを職場目線で行っています。

 神奈川の虹色@ピースフレンズは、「フツーに生きさせろデモ」をおこない、青年ネットAICHIは連続学習会を実施し、京都・HOME-はんなりは毎月の定例会と懇親会で結びつきを深め、広島・安佐南革新懇・若者グループ「カクワカ広島」は講演会を開催し、埼玉・久喜革新懇は「若い世代の声を聴くつどい」を開催するなど、青年の要求とつながりを大切にする取り組みで活動を活性化させています。

 

(3) 各革新懇での歴史をつなぐ出版の状況

 福井・南越革新懇が結成20年『記念文集』を、大阪・交野革新懇が再結成10周年を記念して『10年のあゆみ』を発行しました。川崎の平和で住みよい社会をめざす宮前市民の会(宮前田園革新懇)が結成25年誌「平和で住みよい社会をめざして」を、兵庫・中央区革新懇は『35年の歩み「革新懇の旗を掲げて」』を、大阪革新懇は結成40周年記念誌『今日とちがう明日を拓く』(20月5月)を発行しました。

 奈良革新懇はオールカラー版リーフレット「『革新懇』ってなあに?」を作成して会員拡大に活用し、兵庫・革新芦屋の会は会員を増やして革新懇運動を広げようとリーフレットを作成しています。

(4) 地域革新懇結成への都道府県革新懇の構えと援助の状況

 千葉、山梨、愛知、兵庫革新懇などは県内の未結成・休止の地域を把握し、県内全小選挙区で「市民と野党の共闘」を発展させることも視野に具体的な目標を掲げて地域革新懇の結成支援をする取り組みをおこなっています。

 茨城革新懇は、草の根から革新懇運動を発展させる意義をくりかえし論議し、県内6地域を目標に革新懇の結成・再開に取り組み、会員・読者も増やしています。

 東京革新懇は戦争法廃止の共同を基礎に地方選・自治体首長選での共同を支え総選挙での共闘の前進につなげました。

 「神戸のよりよい保育をめざす会(保育革新懇)」は、アンケートに基づく市行政要請を通じて非正規保育士の待遇改善を勝ち取っています。

 

(5) 革新懇ニュースの拡大

 香川革新懇は、10年で170部から3倍化となる600部を突破する拡大を実現しましたが、賛同団体が要求運動と結んで「全国革新懇ニュース」普及に奮闘したことが特徴点です。

 革新懇ニュースを着実にひろげているところでは、地域の要求実現や関心事を学習会、講演会などで企画すること、焦点の政治課題で共闘に取り組んでいること、事務局と代表世話人会が体制を確立して新しい結びつきを広げていることなど、普及を意識的に追求していることが共通しています。

 山梨革新懇は、拡大世話人会で論議し、地域革新懇と賛同団体がそれぞれ目標を持って奮闘して読者最高現勢を達成しました。

 

おわりに

①コロナ・パンデミックのもとで公共性を壊し続けてきた新自由主義経済の破綻が表面化する一方で、富の偏在がさらに加速して富裕層や投資家が発言力を高めるという両面の状況が生じています。矛盾は激化しています。矛盾が深まる中で、自民党、支配層の共闘分断攻撃がし烈さを増しています。

 国際法や国連憲章を無視したロシアのウクライナ侵略は、国連の役割強化の動きの一方で、NATO強化をはじめとする軍事ブロック化と「民主主義対専制国家」という新たな対立を深め、軍事費増の動きが各国でもおきています。

② そのような今の情勢に見合った役割を革新懇が果たすためにも、「革新懇づくり」は急務です。地域のみならず賛同団体の属する分野や青年層などでも、それぞれの影響力を高め、個別の要求を政治革新につなげ、統一戦線運動をめざすことが、「市民と野党の共闘」を強く確かなものとしていくことになります。

 「市民と野党の共闘」の前進、発展の状況をふまえ、「三つの任務(「要求と政治の架け橋として諸課題での共闘の前進をめざす」、「『市民と野党の共闘』の支え手として奮闘する」、「『3つの共同目標』にもとづく革新統一戦線の担い手の役割を果たす」)」をあらためて確認し、それを果たすためにも三つの力(政策の力、組織の力、草の根の力)を高めていきましょう。

 すべての自治体・行政区(さらに校区)での革新懇づくりを目標に、計画を持って取り組みましょう。「全国革新懇ニュース」と会員の拡大に力を寄せ合い、諸課題での交流会・学習会の開催などで「組織の力」を高めていきましょう。首長選挙、地方自治体も含めて「一人区」などでの共闘の可能性を組みつくし、統一地方選挙でも「市民と野党の共闘」の前進、発展をめざすなど、支え手の役割を発揮しましょう。

以 上

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