2025年10月27日
平和・民主・革新の日本をめざす全国の会 代表世話人会
10月21日の首相指名選挙で、自民党の高市早苗総裁が日本維新の会などの協力で首相に選出された。
本年7月の参議院選挙でも自民党は大きく議席を後退させ、衆参両院で過半数割れするという事態に陥り、2カ月以上も党内で権力争いを続け高市総裁を選出した。しかし、二度の国政選挙で示された裏金問題などへの有権者の批判に向き合わず、企業・団体献金の規制強化に背を向ける自民党に、これまでの連立相手であった公明党が不満を強めて政権から離脱した。その後、野党を巻き込んで自民党政権の延命が画策され、日本維新の会がその「助け舟」となった。この一連の経過は、自民党政治の行き詰まりを端的に示している。
他方、立憲民主党が軸となって自民党に代わる政権協議が行われたがまとまらなかった。
首相指名選挙に先立って20日に取り交わされた自民党と日本維新の会の「連立政権合意書」では、この間の選挙で有権者が強く求めた企業・団体献金の禁止と消費税減税などを棚上げする一方で、「医療費年4兆円削減」をはじめ社会保障改革の口実でいっそうの患者・利用者負担増、サービス供給体制の切り捨てを進めることや、二度の住民投票で否定された「大阪都構想」を前提にした「副首都構想」の法案提出、「安保3文書」改定による大軍拡の推進と武器輸出の促進、「スパイ防止法」の制定、憲法9条改悪の両党起草協議会の設置など、民意に逆らう「反動化計画」が目白押しである。
また、21日に発足した第1次高市内閣の閣僚は、首相と思想・信条が近いタカ派議員が並び、女性閣僚も2人にとどまり、翌日に決定された副大臣、政務官54人のうち、裏金に手を染めた旧安倍派の議員7人を任命した。民意と向き合わず、カネにまみれた政治を改めようとしない政権の性格を端的に示した。
高市首相は24日の所信表明演説で、維新との「連立政権合意書」の実現とともに、27年度に軍事費をGDP比2%(11兆円規模)に増額する目標を補正予算とあわせ25年度中に前倒し実施し、「安保3文書」を26年度末に改定することを表明した。必要な財源論議も曖昧なままに戦争準備に巨額な軍事費をつぎ込む「総額ありき」の大軍拡が、国民生活をさらに苦しめることは火を見るより明らかである。
また、日本経済の強い成長の実現をめざすとして「日本成長戦略会議」の創設に言及し、軍事とともに経済でも「大国化」をめざす姿勢を露骨に示した。このような経済政策は、円安による物価高と国内消費の低迷を深刻にした「アベノミクス」の継続・強化であり、この点でも暮らしを犠牲にしかねないものである。
高市首相は、厚生労働大臣に対して労働時間の規制緩和を指示したとも報じられている。欧州各国が、週労働時間35時間など労働時間規制の強化で経済成長の果実を労働者にも配分する国際的な流れに逆行し、国内での少子化対策などの社会政策とかかわるワークライフバランスとの整合しない時代錯誤の動きである。
維新の会は連立の「絶対条件」として、25年臨時国会中の「衆議院議員定数の1割削減」を主張し、高市首相もこれを受け入れた。立憲民主党や国民民主党も定数削減に賛同する動きを示し、当面の最大争点として急浮上した。多様な意見の国政への反映を担保し、政府の暴走をチェックする国会の監視機能を弱体化させる選挙制度の改悪を党利党略で進めさせてはならない。緊急に反対の声を上げ、広げる必要がある。
先の参議院選挙の結果からしても、今国会が優先して論議すべきは高物価に苦しむ市民の暮らしを応援する施策の具体化であり、そのための消費税減税である。国内外から強く実現が迫られている選択的夫婦別姓の実現である。医療・介護労働者の労働条件改善と危機的な状況にある病院経営の立て直しのための緊急の対策であり、食糧の安定供給、自給率向上のための農政転換だ。裁判所によって指弾された再審制度の抜本改善、生活保護基準の是正と損害の賠償も待ったなしの課題だ。
高市政権は、政治の反動化を推し進める危険性とともに、これまでにない弱点を抱えるという両面を持っている。自民党政治を支えてきた公明党が離脱したことで、この支えが喪失した。自民党政治を見せかけで批判し、補完してきた勢力を取り込んだことで、政権批判のニセの「受け皿」を壊すことになった。
その両面を過不足なく直視し、切実な要求課題の実現に国会が正面から取り組むことを求め、たたかいと共闘を「今だからの構え」で強めよう。それらの取り組みを自維連立の反動政治、逆流政治と対決し、暮らし・平和・民主主義を守り新たな共同に発展させるために、革新懇の役割を果たそう。